2024年12月22日(日)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年2月25日

 JCASTニュースが2月15日に「早大、ネット授業の複数同時視聴で『約100人不合格』が波紋 商学部『不正受講は事実と認識』」と報じたことに対して、ネット上で話題となっている。オンデマンド授業を複数のタブや複数のPCで同時再生する方法で、学生の間では、「複窓」と呼ばれている方法だ。短時間で単位を取得できると多くの学生がやっているのだが、早稲田大学では、「複窓」は出席扱いにせず、単位取得要件が満たされていないとの理由で、成績評価を単位不認定のFランクにしたというものだ。

 早稲田大学のネット授業は「Moodle」という無料のオープンソースの学習プラットフォームが使用されている。問題は、この学習プラットフォームに同時再生を禁止する機能がないということだ。同じアカウントで、幾つでも実行できる仕組みは、わざわざ「排他制御」という仕組みを作り込む必要があることから、「排他制御」が行われていないシステムは結構多い。Webメールなどがいい例だ。

「複窓」が日本の知財を流出させる

 「排他制御」の問題は、「複窓」だけではなく、日本の知財が海外に流出する原因にもなっている。

 そもそも日本の大学では、学生に付与されるIDの管理は、各大学に任せられている。

 入学と同時に割り当てられたIDは、本来なら卒業と同時に無効化されるべきだが、ほとんどの大学では、卒業後も使用できるケースが大半だ。近年、同窓会の運営を業者に任せている大学が増えているが、ほとんどの場合、学生時代に付与されたIDがそのまま同窓会会員IDに利用されているケースもあり、永遠に無効化されないIDも増えているようだ。

 一方、学生に付与されたIDは、学術ネットワーク(SINET)のアクセスにも利用されている。SINETとは、国立情報学研究所(NII)が構築、運営している日本全国の大学、研究機関などが利用している学術情報基盤のことだ。

SINET利用概念図(SINETホームページより)

 学術ネットワークに接続することで、大型実験施設やスーパーコンピューター、観測機器、学術情報データベースなどを使用することができるし、海外との連携も可能だ。特に学術情報データベースに含まれる論文は、本来、有料だが無料で利用できるため人気が高い。

 したがって、日本の大学生のIDは、非常に利用価値が高いと言える。その本当の価値を知っているのは、「複窓」を使って単位取得を目指すような学生ではなく、留学生だ。とりわけ日本の大学に大量の学生を送り込んでいる中国人留学生が極め付けだ。


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