2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月13日

 フィナンシャル・タイムズ紙外交コメンテーターのラックマンが、2024年5月20日付の同紙で、中露の結束につき、両者が共有する反米姿勢が相互の緊張を隠していると述べている。

2024年5月16日中国の習近平国家主席(右)とロシアのプーチン大統領(代表撮影/AP/アフロ)

 キッシンジャー外交の評判は、1970年代初頭、世界に突然発表された米中和解で冷戦の力学を変えたことだ。ソ連は突然孤立した。2022年のロシアによるウクライナ侵略以来、西側諸国はこの手法を再現し、ロシアと中国の「無限」の関係を離そうと努めてきた。

 しかし、どちらに接近するかについては意見が分かれる。欧州人は、ウクライナについて習近平を説得しプーチンに厳しく当たりたい。つまりロシアを孤立させたい。

 しかし米国には中国がより危険な長期的敵対者であるとの総意がある。米国の戦略家は、ロシアを中国の側に追いやり、結果として世界の力の均衡が北京に有利になることを心配する。

 長年の対中敬愛にも拘わらず、キッシンジャーは、死の直前に、弱体化したロシアが事実上中国の衛星国になり、その結果、中国の勢力圏がポーランド近くまで拡大することを懸念していると語った。

 理論的には、中露の分断が解決策となるが、残念ながらその可能性は、近い将来はない。プーチン訪中の際の温かい歓迎は、中露関係の堅固さを証明している。

 習近平とプーチンの絆は共通の世界観に基づいているため、強固だ。両者は、米国を主要な脅威とみなす独裁的な国家主義者だ。

 今回の共同声明は、米国が中露を対象とした「二重封じ込め」政策を追求し、「覇権的」行動を取っていると非難する。中露は、米国が北大西洋条約機構(NATO)を欧州で、日韓比豪との二国間同盟をインド太平洋地域で形成し、中露を包囲しようとしていると考えている。中露の友好関係の維持は、米国等による「二重封じ込め」を防ぐためである。

 長期的には、ロシアは中国への依存が高まることや両国間の力の差が拡大することを心配しているはずだ。ロシアは19世紀に中国から数十万平方キロメートルの領土を割譲させたことをよく知っている。

 しかし、最近の中国の地図には、一部のロシアの都市が昔の中国名で表示されている。ロシアはこれには気付いているはずだ。しかし、これらの緊張は大部分が表面下に留まっている。これが1971~72年と今の重要な違いだ。


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