2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月13日

 当時、中ソの対立は明白であり、それはニクソンとキッシンジャーに中国を誘い込む明確な機会を提供した。70年代にその機会を掴むためには、米国が中国の立場に、特に台湾について重要な譲歩を行うことが必要だった。

 今日、中露分断を図るためには、恐らく台湾あるいはウクライナにつき一層難しい政策転換が必要となるだろう。米国にそのような動きをする意欲はほとんどない。少なくとも今のところは。

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強固となった中露関係

 この論説は、今の中露関係を離反できるかどうかを議論した興味深い記事である。

 今、中露関係は地政学上、相互利益上も強固だとの指摘はその通りで、今の関係においても両国の間に緊張は有るがその緊張は当面表面には出て来ないとの見立てもラックマンの言う通りだろう。

 さらに、中露離反を実現するには、キッシンジャーが1970年代に「米国が中国の立場に、特に台湾問題について重要な譲歩を行う必要があった」と指摘し、仮に今、中露離反の機会が出ても、台湾やウクライナについて難しい譲歩が必要となると直截に指摘する。非常に興味深い指摘で、彼の言わんとすることは理解できる。

 過去のことはやり直すことはできないが、カウンター・ファクチュアル(反事実思考的)に考えれば、あの時あのような行動をしなかったならば、今こんなに苦労することもなかったのではないかと思うことはある。しかしラックマンは、「少なくとも今のところは」米国はそのような動きをする意欲はないと結論する。それもそうであろう。

 ラックマンはこの記事の中で、キッシンジャーが死の直前に彼に、「弱体化したロシアが事実上中国の衛星国になり、その結果、中国の勢力圏がポーランド近くまで拡大することを懸念している」と語ったと明らかにしている。これも非常に興味深い話である。

 プーチンは、5月16日に習近平と会談し、「新時代の包括的戦略パートナーシップ」を深化させるとした長文の共同声明に署名した。中露で軍事協力を深めること等を盛り込んだ共同声明には、米国の日韓両国との安保協力を念頭に、「北東アジアのパワーバランスを変えようとする覇権行為に反対」、貿易、金融、エネルギー分野等を例示し「国際経済の政治化に反対」、米国の「所謂二重封じ込め政策」に中露は対処していくと書かれた。


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