2024年6月15日(土)

BBC News

2024年6月8日

イギリスのリシ・スーナク首相が6日、第2次世界大戦のフランス・ノルマンディー上陸作戦から80年を記念する現地式典を早退したことについて、イギリス国内で批判が高まっている。7月4日の総選挙を前に、現時点における選挙戦最大の失策と言われている。

翌7日に行われた7政党の代表によるテレビ討論会では、この件について保守党のペニー・モーダント下院院内総務兼枢密院議長に批判が寄せられた。

モーダント氏は、スーナク氏の早退は「間違っていた」と発言。一方で、首相が退役軍人と市民に謝罪したことは正しいと述べた。

80年前の1944年6月6日、アメリカ、イギリス、カナダ、フランスの連合軍の15万人以上が、フランスをナチス・ドイツから解放するため、フランスの五つの浜辺に上陸した。作戦開始のこの日は、「Dデイ」と呼ばれる。

現地での式典には、イギリスからはスーナク首相のほか、国王チャールズ3世、デイヴィッド・キャメロン外相、最大野党・労働党党首のサー・キア・スターマーなどが参加した。

スーナク氏は、イギリス軍が上陸したヴェール=スル=メールでの式典などには出席したものの、その後に行われたオマハ・ビーチでの国際式典には参加せずに帰国。キャメロン外相が代理として残った。

国際式典には、アメリカのジョー・バイデン大統領ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、カナダのジャスティン・トルドー首相など、多くの世界の指導者が出席していた。

労働党のスターマー党首は、最後まで式典に残っていたことを、労働党が確認している。

スーナク首相が式典を早退し、早期帰国したのは、英民放ITVのインタビューを収録するためだったとみられている。

首相はこの件について、7日にソーシャルメディアで謝罪。「ノルマンディーでのイギリスの式典の後、私は帰国した。フランスに長く留まらなかったことは間違いだったと反省しており、ここに謝罪する」と述べた。

また、作戦で払われた「究極の犠牲」が、「政治によって覆い隠される」ことがないよう願っていると付け加えた。

すでに「政争の具」に

しかし、7日のテレビ討論会では、防衛に関する議論の中でスーナク氏への批判が出た。

リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、スーナク氏の早退という「ひどい」決断は、「きわめて愛国的でない首相」だという証明だと指摘した。

スコットランド国民党(SNP)のスティーヴィン・フリン・ウェストミンスター議会代表は、「自分の政治的キャリアを、公への奉仕より優先させる首相は、首相ではない」、「ノルマンディー作戦に参加した退役軍人より優先する首相は、首相ではない」と批判。「だからこそ、我々全員が国に奉仕し、保守党政権を退陣させる義務がある」と述べた。

野党・自由民主党のデイジー・クーパー副党首は、80年前の上陸作戦に参加した祖父を引き合いに出し、首相の行動は「政治的な恥」だと指摘した。

ウェールズ党のリーン・アプ・ヨーワース党首は、「首相がこの日に、自分の政治的将来を優先することにしたのは、不適切な決断だった」と述べた。

緑の党のカーラ・デニア共同党首は、あまりに多くの退役軍人が「その後の生活に苦労していることは悲劇だ」と述べた。

保守党のモーダント氏はこれに対し、「あってはならないことだったが、首相は正しく退役軍人に謝罪し、また私たち全員に謝罪した。私たち全員の代表だからだ」と述べた。

また、この件を政争の具にするべきではないと強調したが、自らもノルマンディーでの式典に参加したファラージ氏は、すでにそうなっていると指摘した。

モーダント氏は一方で、他の保守党議員のように、この件に関連してスーナク氏の退役軍人政策や防衛策をたたえたりはしなかった。

さらに、自分なら式典を早退したかと問われたモーダント氏は 「私はDデイ(の式典)には行かなかった。今回のことはあってはならないことだったと思うが、首相は謝罪したと思う」と返した。

「しかし、私が重要だと思うのは、作戦に参加した人々の功績を尊重することだ。兵士たちは、私たちの自由のために戦った。そして、私たちが国防に適切な予算を使わなければ、先人が残してくれた功績に報いることができない」

<解説>ジョー・パイク政治調査担当編集委員

今回の件について、スーナク首相と首相官邸は二つの過ちをおかしたたようだ。

ひとつは、何週間も前の時点ですでに(総選挙が発表される以前に)、この式典の主要部分を首相が欠席してもかまわないなどと、決定されていたこと。

そしてもうひとつは、選挙の実施が発表されてもなお、式典早退の印象がいかに悪いか踏まえて決定を見直さなかったことだ。

保守党関係者はBBCに対し、党の選挙対策本部では、式典早退が問題になるなど、誰も気づいていなかったのだと話した。来週イタリアで開催される主要7カ国(G7)首脳会議で、スーナク首相は同じ顔ぶれの首脳全員に会うからというのが、その理由だという。

6日午後にロンドンに戻ったスーナク氏は、確かにITVの取材に応じたが、その詳細が決まったのは前日だったという。

ITVは週後半の取材を希望していたが、首相官邸からは6日しか選択肢がないと提案されたと聞いている。

つまり、国際式典の前にノルマンディーを発つという決定は、テレビインタビューを受けるためにではなく、他の仕事をするためにされたということになる。

長年にわたる安全保障上の懸念から、首相官邸は首相の動向について常に口を閉ざしている。そのため、ITVが首相にインタビューするという予定自体、政界関係者にあまり広く知られていなかった。

取材は当初、12日の番組に向けての事前収録だった。しかし、税制をめぐる保守党の主張が「うそ」だと言われていることに対して、首相が初めてカメラの前で答えたため、ITVは即座にこの映像を使用することにした。

6日午後8時45分、司会のポール・ブランド氏は税制についてスーナク氏が答えた様子の動画を、ソーシャルメディアに投稿した

10分もたたないうちに、政治ジャーナリストたちは、この取材と式典早退との関連性を見抜き、いつの取材だったのかと行われたのか尋ねていた。

保守党の公式の情報筋は、ほとんど沈黙していた。

午後10時半には、労働党寄りのタブロイド紙「デイリー・ミラー」が、「首相はDデイを捨てた」という翌7日付朝刊の1面を公開した。

複数の保守党候補から怒りが噴出する中、首相の側近はどのように対処するかを議論した。

すぐに謝る――。それが側近たちの結論だった。7日午前7時45分、首相は謝罪文を投稿した。

(英語記事 Penny Mordaunt says Rishi Sunak leaving D-Day event was 'wrong'/Sunak's D-Day absence: How the PM walked into an election blunder

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c6ppn40gkn6o


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