2024年5月1日(水)

ヒットメーカーの舞台裏

2009年4月28日

 最終的な価格決定は発売が2カ月後に迫っていた08年12月だった。その1ヵ月前、チームは一般ユーザーによる「モデルクリニック」を行った。実車を展示し、参加者の想定価格を提出してもらうのだ。基本グレードの価格は、ほぼすべて200万円を超えていた。

 井口の自信は裏打ちされた。「ムーブメントが起こせるはず」という最終的な価格案を上層部に提出した。

 インサイトは189万円から221万円まで3グレードで発売されたが、井口が目指した通り、発売後1ヵ月の初期受注では189万円の基本モデルが全体の40%と最量販タイプになった。

 お手ごろHVの実現は、研究所や社外の協力メーカーなどによる総力戦ともいえるコスト低減の成果だ。その成果をフルに生かした絶妙の「売価」と仕様の設定がユーザーの共感につながった。(文中敬称略)
 

■メイキング オブ ヒットメーカー 井口郁さん(4輪営業部企画業務室営業企画課主任)

井口 郁(4輪営業部企画業務室営業企画課主任)

1970年(0歳)
神奈川県藤沢に生まれる。小学生時代にスーパーカーブーム到来。その後ホンダ・プレリュードに乗って通勤する中学校の先生の車に憧れる。
1988年(18歳)

高校〜大学時代に、F1とバイクレースに熱狂、アイルトン・セナのファンに。マクラーレン・ホンダのステアリングに描かれた「H」マークに憧れた。
アルバイトで貯めた100万円で、念願のマイカーを中古で購入。予備知識ゼロで買ったクルマがスポーツエンジン搭載に驚く。
1992年(22歳)
地元の車体製造メーカーに就職。初めての新車として「ホンダS2000」を購入。高回転エンジンに感激し、その後バイクも「ホンダドリーム50」を購入。ホンダへの想いが強くなっていく。
2001年(31歳)
30歳となり、最終商品を作る自動車メーカーで仕事がしてみたいと、転職を決意。現在、通算5台目のクルマを所有しているが、クルマ選びの最優先項目はエンジンがいいこと。理由はクルマのなかで一番お金がかかっているのがエンジンだから。ただし、エンゲル係数ならぬ、「カーゲル係数」が高いのが悩み。

 

◆「WEDGE」2009年5月号より

 

 

 
 

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