ひとつは、8月党大会を前に、各地の遊説先での言動、マスコミ接触、公式行事などを通じ、肉体面、メンタル面の脆弱性が再び露呈し、評判がガタ落ちした場合だ。
この点、民主党幹部の多数が、「今後1~2週間程度」がバイデン氏を後押しし続けるかどうかを判断する“分水嶺”だとしている。そしてもしこの間、バイデン氏の挙動に再び疑問符がつけられる場面がたびたび現出した場合、民主党全国委員会委員長らがジェフリー・ザイエンツ大統領首席補佐官、オマリー・ディロン再選委員長ら側近たちとの緊急会議に臨むシナリオが指摘されている。
もうひとつは、やはり「今後1~2週間程度」で明らかにされる各種世論調査動向だ。これらの世論調査の結果、バイデン氏への不支持が一段と広がり、トランプ候補に支持率で大きく引き離された場合、民主党議員たちの不満が一挙に噴き出し、ジェフリーズ下院院内総務、シューマー上院院内総務ら議会民主党首脳部らが、直接バイデン大統領と面談し、選挙戦からの撤退を強く迫る可能性も否定できない。
決断の時間はあまりない
最新の世論調査結果は、各実施機関によってばらつきがある。
ニューヨーク・タイムズ紙が討論会直後にSiena College(シエナ大学)と合同で実施した調査(6月28~7月2日)によると、トランプ氏がバイデン氏を6%もの差で引き離し、一段と有利に立っている。米CBSテレビ調査(7月3日)によると、小差ながら全米で2%、接戦州で3%と、いずれもトランプ氏がバイデン氏をリードしている。
しかし、「Ipsos」世論調査(7月2日)では、両者は「いぜん互角」となっている。ブルンバーグ・ニュースが調査機関「Morning Consult」と行った最新調査(7月6日)では、ペンシルベニア、ウィスコンシンなど接戦州で、トランプ氏47%に対し、バイデン氏45%と、一時5%以上だった差が2%にまで縮まってきている。
ただ、バイデン氏の今後、1~2週間の言動で、年齢的衰えが一挙に露呈してきた場合は、支持率は目に見えて悪化する可能性も否定できず、民主党首脳陣の決断も正念場を迎えつつあることは間違いない。
もし民主党候補をバイデン氏から差し替えるとすれば、早急な決断が迫られる。すでに報じられている通り、何らかのきっかけでバイデン氏が撤退に追い込まれた場合、カマラ・ハリス副大統領が交代候補として最有力視されている。
また、8月党大会までにある程度の時間的余裕を残して交代となれば、ハリス候補の下で、トランプ候補相手に互角に戦えるとの読みも民主党内にある。
このため、民主党としては、撤退勧告か既定路線のままで大統領選を乗り切るかの瀬戸際に今立たされており、決断のための時間はあまり残されていない。