党指導部は引き続きバイデンを支援
これに対し、バイデン氏自身もその後、討論会前に外遊など過密スケジュールをこなし、体調が万全でなく、「討論の最中に半分居眠りしていた」「間違いを犯した」などと語り、不名誉な結果に終わったことを認めた。
しかし、選挙戦途中での撤退要求には応じず、3日午後、急遽ホワイトハウスに招き入れた民主党の20人以上の各州知事との会合で、このまま11月の投票日まで戦い抜く決意を表明。出席した知事たちも、「大統領選に勝利することが最優先課題だ」として、引き続きバイデン氏を支援していく姿勢を確認した。
民主党の議会指導者たちも、今のところ、バイデン支持の姿勢を変えていない。
一方、討論会直後に公表された各種世論調査結果はいずれも、バイデン氏の撤退が望ましいとする意見が過半数に達していることを示した。
米CNNテレビの調査(6月28~30日実施)では、「バイデン氏以外の候補のほうがトランプ候補に勝てる」と答えた人が75%に達した。CBSテレビ調査(6月28~29日)では、72%が「撤退すべき」と答え、ロイター通信調査(7月1~2日)でも回答者の56%が同様に撤退を求めた。
候補者差し替えに踏み切れない4つの事情
しかし、このように討論会をきっかけに、全米の民主党支持者の間で、バイデン氏に対する「不支持」「撤退要求」が急速に広がってきたにもかかわらず、民主党指導部が「候補差し替え」にすぐに踏み切れない背景には、いくつかの事情がある。
第一に、今年初めからの民主党候補を選ぶ各州予備選を通じ、バイデン氏がほとんど無競争で勝ち進み、全国民主党本部(DNC)も同氏を常に後押ししてきた経緯がある。
バイデン氏はすでに、民主党候補を正式指名する8月の全国党大会に先立ち各州合わせ4000人近くの「代議員」のうち3894人もの支持を取り付けており、バイデン氏自身が党大会で出馬辞退を表明しない限り、これらの「代議員」たちは、自動的に「バイデン氏支持表明」を事実上、義務付けられている。
第二に、仮に党大会前に、民主党有力者たちの説得を受けバイデン氏が撤退決断した場合、党大会はこれらの「代議員」たちが急遽、バイデン氏に代わる候補を選ぶ「オープン・コンベンション」となり、各候補が入り乱れて大混乱を引き起こすことは必至だ。
1968年大統領選の際の民主党全国大会がまさに好例であり、当時、ベトナム反戦の嵐が全米で吹き荒れ、戦争を推進してきたジョンソン大統領が全国党大会5カ月前になって再選に向けた出馬断念に追い込まれた。
党大会では、戦争政策支持のハンフリー副大統領のほか、反戦派のマクガバン候補らが名乗りを上げ、3日間の大会期間中、会場内外は数千人の警官隊が出動して警備に当たるなど大混乱と化した。
民主党内の内ゲバとカオスぶりは全米で大々的に報じられ、結果的に同年11月の大統領選では、民主党候補となったハンフリー氏が共和党のニクソン候補に大敗を喫する結果となった。