シー・シェパードはかつて日本の捕鯨船団に対して、船ごと体当たりする危険な行為をしたり、和歌山県太地町のイルカ漁の漁師らには執拗なストーカー行為を繰り返していた。こうした苛烈な抗議行動は全てカリスマ的な存在感のあったワトソン容疑者に命令されたり、そそのかされたりして、SSのメンバーらが行っていた。
ワトソン容疑者は抗議船に米国の有料チャンネルのクルーを乗船させるなどして、SSの活動をドキュメンタリー番組「Whale Wars」にまとめ、支持者らに寄付金を呼びかけ、これを活動資金にしていた。Whale Warsは欧米やオーストラリアなどの反捕鯨国を中心に放映され、人気を博し、一方で日本の捕鯨に対する国際的な圧力が高まった。
ワトソン容疑者をめぐっては、かつて米国内でエコテロリズムが猛威を振るっていた際、米連邦捜査局(FBI)捜査官がシー・シェパードの団体の起源こそが「エコテロリズムの起源」と指摘したこともある。
日本の漁業取締船も購入
ワトソン容疑者は日本の海上保安庁のほかに、02年に中南米コスタリカでサメ漁を妨害したとしてコスタリカ当局が逮捕状を一時、用意した。12年にはワトソン容疑者がドイツ国内の空港に立ち寄った際に、コスタリカの要請に基づき、ドイツ当局が身柄拘束。その後、ドイツ国内で司法手続きが進み、コスタリカへの身柄移送の準備が行われていたが、保釈中に国外へ逃亡した。
その後、ワトソン容疑者は米国やフランスなどで逃亡生活を続けていたが、米国居住中の19年、シー・シェパードの団体幹部らと関係が悪化し、団体のあらゆる職から解任されていた。
そうして、22年、SS時代から関係が深かった米国の起業家とともに新団体のCPWFを立ち上げた。24年4月には、CPWFが日本の漁業取締船を購入して、この新船をもとに、「日本の捕鯨を再び妨害する」と宣言していた。
19年に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退した日本は、日本近海での商業捕鯨を開始。今年5月には全長112メートルの新型捕鯨母船「関鯨丸」を就航させ、70トン級の大型クジラの引き揚げを行えるよう整えた。