![](https://wedge.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/600wm/img_f6cab271ab1766389a403de2caacbff1180372.jpg)
アメリカのジョー・バイデン大統領は29日、連邦最高裁の抜本的な改革案を明らかにした。判事の終身制の廃止などを打ち出すとともに、最高裁の「極端な意見」を批判した。
この提案は、保守派優勢の現在の最高裁が人工妊娠中絶の憲法上の権利を覆し、大統領の「公的行為」に関して訴追免除を広範囲に認めるなど、一連の重大な判断を示したのを受けたもの。
バイデン氏は、判事の任期を18年とし、「信頼と説明責任の回復のため」に倫理規定の適用を強いるよう提案している。
しかし、野党・共和党が下院を支配しているため、議会の承認を得るのは難しい情勢だ。
民主党は最高裁改革を推進することで、11月の大統領選挙を前に、有権者らの関心を喚起したい考え。
最高裁をめぐっては、クラレンス・トーマス判事が高額な贈り物を受け取ったのを報告していなかったとの調査報道がなされてから、倫理違反だとする批判が出ている。
現在の規則では、判事9人は終身制で、辞任か死去した場合に、大統領が新たな判事を任命する。ドナルド・トランプ前大統領は4年間の任期中、3人の判事を任命した。
バイデン氏、「極端な意見」を非難
バイデン氏はこの日、テキサス州オースティンで演説。連邦最高裁が示した「極端な意見」が「法律と、確立された公民権の原則と保護を損なっている」と述べた。
また、最高裁は「倫理的な危機に陥っている」とし、判事たちに利益相反がみられると主張。「最高裁への信頼を回復し、民主主義に不可欠なチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)のシステムを維持するには、これらの改革が必要だと確信している」と訴えた。
演説は、公民権法の施行60周年を記念するものだった。
バイデン氏は一方、同日付けの米紙ワシントン・ポストへの寄稿で、「今起きていることは正常ではない」と主張。
「個人の自由に影響するものも含めて、最高裁の判断に対する国民の信頼を損なう事態になっている」とした。
バイデン氏はこれまでに、2年ごとに新たな最高裁判事を任命し、その任期は18年にするよう提案している。改革派は以前から、そうした制度が最高裁を非政治的なものにするのに役立つと主張している。
バイデン氏はまた、最高裁の倫理規定を議会が策定することによって、判事に対して贈り物に関する情報開示と、あからさまな政治活動の回避を求めるべきだとしている。
最高裁は昨年、初めて倫理規定を発表したが、強制力はない。
バイデン氏はさらに、トランプ前大統領など大統領経験者について刑事訴追を一部免除されるとした今月1日の最高裁判決を覆せるよう、合衆国憲法の修正案を可決するよう求めている。
寄稿の中でバイデン氏は、「大統領の権力は絶対的ではなく、限定的だという建国者たちの信念を私は共有している」、「私たちの国は法治国家だ。王や独裁者の国ではない」とした。
トランプ前大統領ら共和党側は反発
共和党側は改革案に反発している。
トランプ陣営は29日の声明で、バイデン氏と、大統領選で民主党候補になる見通しのカマラ・ハリス副大統領が、最高裁の「正当性を損なう」ために動いていると非難。
「これはすべて、最高裁を極左で急進的な判事で固めようとするカマラの企みの一部だ。そうした判事は法律ではなく、政治に基づいて判決を出すだろう」とトランプ陣営は批判した。
共和党のリンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州)は28日、リベラル寄りの判事たちが「民主党の好む意見を出している」時には、同党は改革の努力はしなかったと、BBCが提携する米CBSに話した。
共和党のマイク・ジョンソン下院議長も、改革案は下院に「届いた時点ですでに死に体だ」と述べた。これに対してバイデン氏は、ジョンソン氏の「考え方が、届いた時点で死んでいる」と述べた。
共和党上院もバイデン氏の提案を非難。テッド・クルーズ上院議員(テキサス州)は「最高裁の正当性への攻撃」だと述べた。
ボストンのノースイースタン大学で法学と公共政策を教えるダニエル・アーマン教授は、今回の提案を「少なすぎ、遅すぎ」と評した。
「レームダック状態の大統領が大きな立法上の仕事を成し遂げるのはまれで、仮にそうしたとしても、下院は現在の最高裁に満足している共和党が支配している」とアーマン教授はBBCに指摘。
「興味深いのは、ハリス(副大統領)が選挙運動でこの問題についてどう動くかだ」、「裁判所改革はかなり人気がある。特に任期については」と付け加えた。
(英語記事 Biden criticises 'extreme' Supreme Court in push for reform)