2024年8月28日(水)

BBC News

2024年8月28日

アメリカのドナルド・トランプ前大統領が2020年大統領選挙でジョー・バイデン大統領に敗れた結果を覆そうとしたとされる事件をめぐり、司法省のジャック・スミス特別検察官は27日、前大統領に対する新たな起訴状を提出した。

新たな起訴状は、在職中の特定の行為について大統領は訴追を免れるとした最近の連邦最高裁の判決に合わせ、トランプ前大統領に対する起訴内容を修正した。前大統領に関する4件の罪状はそのままだが、訴因の行為に関して記述をいくらか削除した。

たとえば、前大統領が司法当局に圧力をかけ、自らの敗北を覆すよう働きかけようとしたとの主張は取り下げた。前大統領が司法当局に指示したことについて、連邦最高裁は違法ではないとの判断を示している。

これにより、起訴状は45ページから36ページにスリム化された。

前大統領は2020年大統領選について、介入を否定している。ただ、不正投票が広い範囲であったと、証拠を示さずに主張し続けている。

新たな起訴状でも維持された4件の罪状は、国家を欺くための共謀、公的手続き妨害の共謀、公的手続き妨害未遂、権利侵害の共謀。トランプ前大統領はこれまで、すべての罪状について無罪を主張してきた。

前大統領の陣営は、BBCのコメントの求めに応じなかった。

トランプ氏は自らのソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、新たな起訴状が出されたことについて、「『死んだ』魔女狩りをよみがえらせ」、「米国民の関心を(大統領選から)そらそうとする試みだ」と主張。「即時の却下」を求めた。

特別検察官の事務所は声明で、新たな起訴状の提出について、「連邦最高裁の判決と差し戻し指示を尊重し、履行しようとする政府の努力を反映したもの」と説明した。司法省はそれ以上のコメントは出さなかった。

私人として選挙に介入と

新たな起訴状は、トランプ前大統領は大統領としてではなく私人として、選挙結果を揺るがす計画を実行したと主張。前大統領には「候補者として、選挙の勝者とされることへの個人的利害があった」と新たに記している。

また、前大統領がマイク・ペンス前副大統領を説得し、バイデン氏の当選認定を妨害しようとしたとされることなど、いくつかの重要な訴因はそのまま残っている。

米コロンビア大学ロースクールの憲法専門家ダニエル・チャールズ・リッチマン氏は、新たな起訴状について、連邦最高裁の判決後も、スミス特別検察官が裁判を進めることは可能だと判断したことを示しているとBBCに述べた。

ただ、最高裁が示した大統領訴追免除の枠組みに照らして、検察の主張が通るかは不明だと、リッチマン氏は解説。「最高裁は、大統領による私的行為の中でどのようなものなら刑事責任を問えるのかについて、ひどくあいまいにした」と述べた。そして、新たな起訴状の提出は必ずしも裁判の進行を早めるわけではなく、大統領選の前に審理が行われることはないだろうとした。

スミス特別検察官は、2022年にメリック・ガーランド司法長官に任命され、トランプ前大統領に関する捜査の担当となった。大統領選結果を覆そうとしたとされる事件と、退任後に機密文書をフロリダ州の自宅で所持していたとされる事件で、前大統領を起訴している。

スミス氏のチームは26日、機密文書の取り扱いをめぐる事件で起訴を棄却したフロリダ州の連邦地裁の判決を不服として、連邦控訴裁に上訴した

これら二つの裁判は、連邦最高裁が先月、大統領の訴追免除に関して判断を示したことで、先行きが不透明になっている。

11月の大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に勝利した場合、前大統領は司法省に対し、連邦政府による自らに関する起訴をすべて取り下げるよう命じるとみられている。

(英語記事 Special counsel files reworked indictment against Trump

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy0n5kwzn3go


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