2024年9月8日(日)

BBC News

2024年9月8日

パリ・パラリンピックは競技10日目の7日、車いすテニス男子の小田凱人(ときと)が金メダルを勝ち取った。18歳での優勝で、この種目の最年少優勝記録を更新した。自転車女子個人ロードレース(運動機能障害C1-3)では杉浦佳子が金メダルを獲得。53歳で2大会連続優勝を果たした杉浦は、自身がもつパラリンピック金メダリストの日本最年長記録を更新した。

マッチポイントをしのいで勝利

初出場の小田は、前日のダブルスでも銀メダルを取っており、今大会2個目のメダル獲得となった。

世界ランキング2位で第2シードの小田はこの日の決勝で、同1位で第1シードのイギリスのアルフィー・ヒューエットと対戦。第1セット最初のゲームから激しい攻防となり、5回のデュースの末に小田がキープすると、ヒューエットはメディカルタイムアウトを取って脚の治療を受けた。

再開後、小田は鋭いリターンを連発してヒューエットのサービスゲームを次々ブレークし、ゲームカウント6-2でこのセットを奪った。

第2セットは互いにキープを続け、ゲームカウント4-4に。ここからヒューエットは、力強いストロークで小田のサービスゲームをブレークして均衡を破ると、続くゲームをしっかりキープ。小田は4-6でこのセットを落とし、セットカウント1-1となって最終セットでの勝負となった。

第3セットは一転してブレークし合う展開に。小田は先に相手のキープを許し1-3の劣勢となったが、続くゲームをキープして食らいつく。今度はキープ合戦となり、小田は3-5で自らのサービスゲームを迎えた。小田は30-30からネットに出て攻めるも、ヒューエットの角度のあるボールをボレーでネットし、マッチポイントを握られる。ヒューエットはドロップショットを放つが、わずかにサイドアウト。小田はデュースからこのゲームを取ると、その後の3ゲームを連取し、ゲームカウント7-5、セットカウント2-1で勝利した。

金メダル獲得を決めた小田は、車いすの車輪を取り外し、コートに倒れ込んで喜びを表現した。

試合後のインタビューで小田は、「やばい、かっこよすぎる俺」という言葉で、込み上げる気持ちを表現。「マッチポイントから相手がドロップショットをミスって、ああもうこれ勝てると思った。でも、それまでは負けると思っていました、正直。試合前は負ける気はなかったけど、負けると思っていました」と、追い込まれた時の心境を語った。

そして、「俺は今日勝ったことで確定したことがある。俺はこのために生れてきた」と言って両手でガッツポーズを取り、「優勝するために、金メダルを取るために俺は生まれてきました」と続けた。

パラサポWEBによると、現在18歳の小田は9歳のときに骨肉腫を発症。入院中、国枝慎吾さんがプレーする映像を見て車いすテニスを始めた。15歳でプロ転向を表明し、16歳でグランドスラム(4大大会)初出場。昨年の全仏オープンを史上最年少の17歳で制し、世界ランキング1位に史上最年少で到達した。

日本の各メディアによると、小田の名前の「凱」という文字は、今大会の開催地パリの凱旋門にちなみ、「勝ちどきを上げる」という意味から両親がつけたとされる。

今大会、9月1日から試合を戦った小田は自らのX(旧ツイッター)アカウントに、「明日(1日)試合はあるけどテレビ放送はないらしいです。多分試合は日本時間日曜日のゴールデンタイム。なんのためにメディアに出て、演出してきたか分かんなくなりそうだけど、これが現実。とりあえず試合で魅せます」と投稿。パラリンピックをめぐる議論を呼んだ。

3位決定戦はアルゼンチンのグスタボ・フェルナンデスが勝利し、銅メダルを手にした。

日本選手金メダル最年長記録を更新

パラリンピック出場2回目の杉浦は、自転車女子個人ロードレースで、東京大会からの2連覇を果たした。

杉浦は今大会、ロードのタイムトライアル(運動機能障害C1-3)でも東京大会に続く金メダル獲得を目指したが6位に終わり、トラック2種目でも予選で敗退。この日、ついにメダルを手にした。

この日のロードレースは、14.2キロメートルの一般道のコースを4周する計56.8キロで争った。杉浦は序盤から先頭集団でレースを進め、他の5選手と順位を変えながら、駆け引きを繰り広げた。

終盤、スパートした杉浦と2選手による激しい競り合いに。最後はゴール直前のスプリント勝負となり、わずかに前に出た杉浦がこれを制し、金メダルを獲得した。タイムは1位から3位まで同じの1時間38分48秒だった。

銀メダルはスイスのフルリナ・リリング、銅メダルはアメリカのクララ・ブラウンが手にした。

表彰式後にNHKで放送されたインタビューで杉浦は、パラリンピックの日本選手金メダリスト最年長記録を更新したことについて、「みなさんのおかげです。さすがに50代でサポートしてくれる方とか、ふつうはいないと思うんですけど、それでも信じてサポートしてくださった方々のおかげで取れた金メダルだったので、私を支えてくださったみなさんに感謝の気持ちを伝えたい」と話した。

次の目標を聞かれると、「まだ全然……。とりあえずビール飲みたいです」と笑顔を見せた。

杉浦は薬剤師で、「スポーツファーマシスト」を名乗っている日本パラサイクリング連盟のサイトによると、2016年にロードレース大会で落車。脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折などで高次脳機能障害が残った。知人の勧めでパラサイクリングを始め、東京パラリンピックで日本の自転車選手で初の同一大会2冠を達成した。

(英語関連記事 Paris Paralympics 2024 medal results

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0rwex0e0qyo


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