2001年から2009年にかけてジョージ・W・ブッシュ米政権（共和党）の副大統領を2期務めたディック・チェイニー元副大統領が6日、11月の大統領選で民主党の大統領候補、カマラ・ハリス副大統領に投票すると発表した。
チェイニー元副大統領は声明で、「248年続くこの国の歴史において、ドナルド・トランプほどこの共和国を脅かす個人はいなかった。前回の選挙では、有権者に拒絶されてなお自分を権力の座にとどめようと、うそと暴力を使って選挙結果を盗もうとした。二度と彼に権力を託してはならない」と述べ、「市民として私たちは一人ひとりが、党派よりも国を優先させ、この国の憲法を守る責務がある。そのため私は、カマラ・ハリス副大統領に投票する」と表明した。
ブッシュ政権下で安全保障対策や外交など多岐にわたり活躍したチェイニー氏は、長年の共和党員。副大統領のほかは、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で国防長官、1979年から10年間は連邦下院議員（ワイオミング州）、ジェラルド・フォード政権で首席補佐官など、長年にわたり共和党とアメリカ政界で強い影響力を持った。
チェイニー氏の娘で共和党の下院議員だったリズ・チェイニー氏は4日の時点ですでに、自分はハリス副大統領に投票すると発表。その後、6日に自分の父親もハリス氏に投票する予定だと発言していた。
リズ・チェイニー前議員は、2021年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件を受けてトランプ前大統領の弾劾訴追に賛成した共和党下院議員10人の一人だった。その後は、議会襲撃事件を調査する議会特別委員会の委員を務め、トランプ前大統領を厳しく批判し続けた。2022年中間選挙に向けた同年夏の共和党予備選で、同じワイオミング州から下院候補の席を争ったトランプ支持者のハリエット・ヘイグマン氏に敗れて、再選の機会を失った。
ハリス陣営はリズ・チェイニー前議員の支持を歓迎。さらにチェイニー元副大統領の支持表明を受けて、ジェン・オマリー・ディロン選対本部長は「（ハリス）副大統領はチェイニー副大統領の支持を得て、誇りに思う。党派よりも国を優先するという、その勇気を深く尊敬する」とコメントした。
チェイニー元副大統領の発表を受けてトランプ候補はソーシャルメディアで、チェイニー氏を「無意味なRINO」と呼んだ。「RINO」とは「Republican in name only＝名ばかりの共和党員」の意味で、トランプ候補やその支持者らは、自分たちに同調しない共和党関係者をしきりにそう攻撃している。
トランプ前大統領はさらに、チェイニー元副大統領のことを「果てしない無意味な戦争の王様」と批判。これは、ブッシュ政権が2003年3月に開始したイラク戦争の遂行にチェイニー氏が深くかかわったことを、念頭においた発言とみられる。
（英語記事 Former Vice-President Dick Cheney to vote for Kamala Harris）
