2024年12月21日(土)

商いのレッスン

2024年9月21日

ダイエー中内㓛の決断

 さて、有事の際に企業はどのような役割を果たすべきかというお悩みで、思い出す商人がいる。ダイエー創業者の中内㓛である。1995年1月17日、阪神淡路大震災が起こった朝、ダイエーは政府に3時間も先んじて災害対策本部を設置。中内は陣頭に立ち、民間企業の役割をはるかに超える執念と速度でライフラインを死守した。

 中内は「商人」と「商売人」という似た言葉を次のように使い分けた。

 「商人とは社会を変えてやろうという大志を抱いて事業を興す人であり、商売人とは己の会社の利益のみを追求する人であり、社会を変えるような志とは相容れない」

 一方、「企業は社会の公器」と説いたのは、中内と「ダイエー・松下戦争」と呼ばれる対立の当事者となった松下幸之助である。ともに「商人」と呼ぶべき経営者であり、災害時における企業の役割を考えるとき、「商人」という視点は忘れてはならない。

【商いの言葉】
二流の商売人は 己の利益ばかり追い求め
一流の商人は すべての人の利益を守る
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Wedge 2024年10月号より
孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代
孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

孤独・孤立は誰が対処すべき問題なのか。 内閣府の定義によれば、「孤独」とはひとりぼっちと感じる精神的な状態や寂しい感情を指す主観的な概念であり、「孤立」とは社会とのつながりや助けが少ない状態を指す客観的な概念である。孤独と孤立は密接に関連しており、どちらも心身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。 政府は2021年、「孤独・孤立対策担当大臣」を新設し、この問題に対する社会全体での支援の必要性を説いている。ただ、当事者やその家族などが置かれた状況は多岐にわたる。感じ方や捉え方も人によって異なり、孤独・孤立の問題に対して、国として対処するには限界がある。 戦後日本は、高度経済成長期から現在に至るまで、「個人の自由」が大きく尊重され、人々は自由を享受する一方、社会的なつながりを捨てることを選択してきた。その副作用として発露した孤独・孤立の問題は、自ら選んだ行為の結果であり、当事者の責任で解決すべき問題であると考える人もいるかもしれない。 だが、取材を通じて小誌取材班が感じたことは、当事者だけの責任と決めつけてはならないということだ――

 


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