ダイエー中内㓛の決断
さて、有事の際に企業はどのような役割を果たすべきかというお悩みで、思い出す商人がいる。ダイエー創業者の中内㓛である。1995年1月17日、阪神淡路大震災が起こった朝、ダイエーは政府に3時間も先んじて災害対策本部を設置。中内は陣頭に立ち、民間企業の役割をはるかに超える執念と速度でライフラインを死守した。
中内は「商人」と「商売人」という似た言葉を次のように使い分けた。
「商人とは社会を変えてやろうという大志を抱いて事業を興す人であり、商売人とは己の会社の利益のみを追求する人であり、社会を変えるような志とは相容れない」
一方、「企業は社会の公器」と説いたのは、中内と「ダイエー・松下戦争」と呼ばれる対立の当事者となった松下幸之助である。ともに「商人」と呼ぶべき経営者であり、災害時における企業の役割を考えるとき、「商人」という視点は忘れてはならない。
二流の商売人は 己の利益ばかり追い求め
一流の商人は すべての人の利益を守る