上司から「大災害への対応策を検討せよ」と厳命されました。
有事の際に企業はどのような役割を果たすべきですか?
「BCP」という略語をご存知だろうか。「Business Continuity Plan」の略で、日本語では事業継続計画となる。
中小企業庁のBCP策定運用指針では、「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段を取り決めておく計画のこと」をいう。
相次ぐ自然災害を考えると、日本企業の策定率は高くない。ある企業信用調査会社の調べによると、策定済み企業の割合は19.8%と過去最高となったという。しかし、企業規模別にみると、大企業が37.1%に対して中小企業は16.5%と半分以下にとどまる。帝国データバンクの2024年の意識調査によると、未策定の企業の大きな障壁となっているのは、スキル・人手・時間の3要素だった。災害大国であるわが国にあって「自助」は必須だ。
「共助」ではこんな例もある。21年7月にドイツ赤ワインの名産地、アール・ヴァレー地方を大洪水が襲った。畑の90%は被災を免れたものの、家屋や設備のほとんどが大雨で流され、ヴィンテージワインも多くが失われた。
被災に際して力を発揮したのが、地域住民やボランティアだった。多くの支援者がすぐさま醸造所に駆けつけ、泥にまみれたワインの回収や被災した設備の後片づけなどに尽力した。
ドイツ連邦政府が2億ユーロの緊急支援計画を公表した一方で、メディアを通じての寄付金の呼びかけが反響を呼び、わずか数日で43億ユーロもの寄付金が集まった。特筆すべきは「洪水ワイン」だ。奇跡的に出荷が可能な状態で見つかった泥にまみれた20万本のボトルに「authentically muddied(本物の泥)」というシールを貼って希少価値を高め、クラウドファンディングで販売すると、5万人近くから440万ユーロの支援を獲得。ドイツで最も成功したクラウドファンディングとされている。