2024年12月18日(水)

2024年米大統領選挙への道

2024年10月3日

私的メール問題

 2016年米大統領選挙は、ヒラリー・クリントン元国務長官とトランプの戦いであった。選挙戦はクリントン優勢の状態で10月を迎えたが、突然28日、ジェームズ・コーミー米連邦捜査局(FBI)長官が、クリントンが私的メールに使用していたのと同じサーバーを公務に使っていた問題、いわゆるメール問題の再調査をわざわざ発表したのだ。

 選挙におけるクリントン敗北の主たる要因は、彼女が投開票日の直前に南部テキサス州を回り、中西部を訪問しなかった点や、トランプに白人労働者の票を奪われた点にあると言われている。

 しかし、クリントン自身は米メディアとのインタビューの中で選挙戦を振り返り、投開票日の11日前の出来事―FBIによる私的メール問題再調査発表―に選対本部が対応できなかったことが敗因であったと語った。クリントン陣営の視点に立てば、このオクトーバーサプライズは、クリントン敗北を決定づける要因になった。

 この2例は、オクトーバーサプライズが片方の大統領候補に有利ないし不利に働いた事例だが、サプライズが「不発」に終わったケースもある。

「不発」のサプライズ

 2020年米大統領選挙では、投開票日の1カ月前の10月2日、トランプが新型コロナウイルスに感染し、首都ワシントン郊外にあるウォルター・リード軍医療センターに入院するというサプライズが起こった。しかし、トランプは5日に退院するという「超スピード回復」を果たした。これは、感染以上のサプライズであった。

 トランプはホワイトハウスに戻ると、早速バルコニーに立ち、マスクを外して「強いリーダー」をアピールするという演出をした。彼は自身の新型コロナウイルス感染というマイナスのサプライズを、選挙戦にプラスに働かせようとしたのである。

 だが、トランプの戦略的思惑は外れ、サプライズの利用は不発に終わった。

 というのは、新型コロナウイルス禍で、大半の米国民は強いリーダーよりも、コロナウイルスの犠牲者や、その家族および友人に対して感情移入ができる「共感型リーダー」を求めていたからだ。コロナに感染したトランプは、不利な状況を挽回しようと、オクトーバーサプライズを選挙戦略に組み入れたのだが、国民の感情を読み間違えた。

 また、トランプはバイデンの次男ハンター・バイデン氏とウクライナのエネルギー企業との関連情報をボロディミル・ゼレンスキー大統領から入手して、それをオクトーバーサプライズにしようとしたという見方もある。仮にそうであるならば、こちらもトランプの戦略通りには進まなかったと言える。


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