2024年10月17日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年10月17日

 また、この農園では、有機野菜を消費者に知ってもらおうとSNS(Facebook)を積極的に活用している。この農園のページでは、栽培している野菜の播種から収穫までの状況を随時、公開し、PRする。有機農業に興味を持っている消費者にSNSを通じて栽培状況を伝えることで、有機農業を理解してもらい、顧客になってもらうことを目的としているようだ。

 この農園にはタイ料理などを提供するレストランが併設され、農園で栽培された野菜なども提供する。筆者もこのレストランで、コーヒーをいただいたが、落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした時間を過ごすことができた。

レストラン入り口(筆者撮影)

 このタイの農家は化学肥料や農薬を使用しない有機農業のために灌水システムを自作しているだけでなく、そうした栽培状況をSNSの利用で広く伝え、6次産業化にも熱心に取り組んでいる。

東南アジアの先進農家たちから何を学べるか

 台湾とタイの2つの事例を見てきたが、いずれも現地の公務員が紹介してくれた農家だけあって、日本でいう、篤農家に違いない。ここ数年、アジア各地で複数の先進農家と話す機会があったが、彼らの考え方は農家というより経営者に近く、日本の先進農家と何ら変わりはない、と感じている。

 また、2023年にタイのチェンライ県で稲作農家でもトラクターを見せていただいたが、日本製だった。日本は、大手機械メーカーが長年切磋琢磨して開発競争を行ってきたこともあり、トラクターをはじめ農業機械のレベルは高く、アジアのなかでもトップクラスと言えそうだ。

タイの稲作農家の日本製トラクター(筆者撮影)

 日本では、政府が進めるスマート農業の開発・普及も、人手不足が深刻化するなか、省力化に重点が置かれ、自動運転トラクターなどハード面の整備を中心に進められてきた。北海道などでは自動操舵トラクターが急速に普及し、省力化対応には一定の成果を上げている。しかし、日本のスマート農業がどちらかというとハード中心になりがちで、ソフト開発などの比重は高くなかったと感じている。

 ソフト面に目を向けると、農業生産工程管理(GAP)の認証取得やアプリ・クラウドの利用など、日本は進んでいると言えない。たとえば、台湾やタイで会った農家はトレーサビリティやGAPに取り組んでおり、その意義を疑う農家はいなかった。一方、日本の農家はいまだに「GAPに取り組むことが大事なことはわかるが、面倒で取り組んでも収益増に直接結びつかない」「GAP認証を必要とする取引先がなければ、何の意味があるのか?」などとの声が聞こえてくる。


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