こうした否認グループの動きについて実態調査を行った「CMD」のアーン・ピアソン事務局長の説明によると、11月5日の投票に向け最も懸念される点として、接戦が予想される8州にまたがる郡選挙管理委員会のうち、合計61の郡で「否認者たち」が委員として名を連ねており、このうち14の郡の委員会で多数派となっている事実だ。
中でも、ハリス、トランプ両陣営が最重要視しているペンシルベニア州は、全部で67の郡で構成されているが、このうち6郡の選挙管理委員会で同グループが多数を制しているため、州全体の得票数が数千または数百票差で勝敗が分かれた場合、結果が覆される可能性が十分あるという。
これらの点にかんがみ、ピアソン事務局長は「これら接戦州の選挙管理委員会に102人もの『否認者たち』が居座っていること自体、選挙結果をめぐり大混乱を引き起こしかねない事態だ」として、危機感を強めている。
集計結果の認証を「拒否」か
選挙管理委員会における開票作業をかく乱させるための最もありうるシナリオとしては、委員の何人かが集計を終わった票数について認証を拒否するか、認証を遅延させことだとされる。
20年大統領選では、ミシガン州の大都市デトロイトを管轄下に置くウェイン郡において、選挙管理委員会委員の中の共和党員2人が集計結果の認証を拒否したことから、同州の勝敗の確定が一時「保留」状態に置かれたことがあった。
選挙結果の認証拒否は22年中間選挙の際にも、接戦州8州の中の5州で起こり、混乱を引き起こしたが、今回はそれがさらに広がり、大規模な集計遅滞を招くことが懸念されている。
とりわけ今回の場合、混乱の拡大が予想されるのが、接戦州で州政府局長、課長クラスのポストを占める「否認者たち」が、「大規模選挙不正」「陰謀」「市民権を持たない住人による投票」といったニセ情報を州内で拡散、それを根拠に集計結果を凍結させ、訴訟を起こす事態だ。
「この種の訴訟の動きが複数の接戦州に広がれば、やがては、21年1月6日のような連邦議事堂襲撃・占拠事件にも発展しかねない」(ピアソン事務局長)という。
同事件は、トランプ過激支持グループが、全米から集計された「大統領選挙人リスト」を最終的に認証する連邦議会審議を実力で阻止するため、議事堂内に大挙して侵入、多数の死傷者を出した米政治史上、最悪の惨事として知られる。