2024年10月21日(月)

BBC News

2024年10月21日

イギリスのチャールズ国王は21日、訪問中のオーストラリアの国会議事堂で演説をした。話し終えた直後、「あなたは私の国王ではない」という大声が、その場にいた上院議員(無所属)から上がった。議員は警備スタッフによって会場外に退出させられた。

声を張り上げたのは、リディア・ソープ上院議員。約1分間、大きな声を出して式典を妨害し、警備スタッフに連れ出された。

ソープ議員は、演説を終えたチャールズ国王が演台を立ち去ろうとしたとき、後方から前に向かって歩きながら大声を上げた。壇上にはカミラ王妃が座っていた。

ソープ議員は、「私たちの民族」に対する集団虐殺があったと主張した後、「ここはあなたの土地ではないし、あなたは私の国王ではない」と叫ぶように言った。

その後、式典は何事もなかったかのように終了。国王夫妻は議事堂の外に出て、待っていた市民らと会った。

オーストラリアはチャールズ国王が国家元首を務める英連邦の一つ。

ヴィクトリア州選出で無所属のソープ議員は、アボリジニのオーストラリア人女性。長い間、豪政府と先住民との条約締結を主張している。

オーストラリアは、そうした条約がない唯一の旧英植民地。アボリジニやトレス海峡諸島民の多くは、主権や土地を王権に譲ったことはないと強調している。

今回の出来事のあと、ソープ議員はBBCに、国王に対して「明確なメッセージ」を送りたかったと説明。「君主になるには、その土地の者である必要がある」、「彼はこの土地の者ではない」と述べた。

ソープ議員はまた、国王は議会に対し、先住民との和平条約について話し合うよう指示する必要があると述べた。

「私たちはそれをリードし、それを実行し、よりよい国にすることができる。しかし、植民地支配者に頭を下げることはできない。彼があの場で言及した植民地支配者の祖先たちは、集団殺人と集団虐殺の責任がある」

ソープ議員はこの日、ポッサムの皮を使った伝統的なマントを着ていた。2022年に上院議員に就任した際には、故エリザベス女王2世を「植民地化」という言葉で形容した。

ソープ議員の抗議はあったものの、首都キャンベラの議事堂の外ではこの日朝から、厳しい日差しの下、オーストラリアの小さな国旗を振る人々が列を作った。

その一人、ジェイミー・カーパスさん(20)は、国王夫妻がこの日訪問するとは知らなかったと言った。「ハリー(王子)とメガン(妃)が前にここに来たのを見た者として、とても興奮している。王室はオーストラリア文化の一部だと思う。私たちの生活の大きな部分になっている」。

一方、オーストラリア国立大学の学生で、米豪両方の国籍をもつCJ・アダムスさんは、「彼は大英帝国の国家元首なのだから、キャンベラにいる間に、ここならではの経験をしなければならない」と話した。

議事堂前の芝生には、少数の反対派も集まっていた。

王族のキャンベラ訪問では常に、オーストラリアの先住民の歴史に触れることが予定される。ただ今回はソープ議員の介入で、国王夫妻は当初の予定よりも直接的に、その歴史に向き合うことになった。

チャールズ国王とカミラ王妃はこの日、キャンベラに到着し、政治家、学校の子どもたち、先住民族の代表らに迎えられた。

国王は国会議事堂の大ホールで、先住民のコミュニティーと、そこから学んだことについて語り、自身の経験が「そのような伝統的な知恵によって形作られ、強化されてきた」と述べた。

しかし、演説を終えて席に着くと、ソープ議員の抗議の声が会場に響き渡った。

国王の公務を管理するバッキンガム宮殿は、ソープ議員の抗議について公式のコメントを出していない。

王室関係者は、国王夫妻を見て応援しようとキャンベラに何千人も集まったことに、夫妻は深く感動していると話した。

オーストラリアは何十年もの間、君主制から共和制への移行について議論してきた。1999年には憲法を変更する唯一の方法である国民投票にかけられたが、移行案は否決された。

世論調査によると、その後、移行を目指す運動は支持が広がっている。アンソニー・アルバニージー首相は、長年の共和制支持者だ。

しかし、アルバニージー政権は、先住民をオーストラリアの「ファースト・ネイション(最初の人々)」として承認する計画が昨年の国民投票で否決されたことを受け、共和制への移行に関する国民投票の再実施はすぐにはないとしている。

チャールズ国王のオーストラリア訪問は、母のエリザベス女王の死去で王の地位を継いでから初めて。国王はがんの治療を受けており、今回の訪豪は健康上の理由から、これまでの王室によるものより短い。

(英語記事 Not my King, Australian senator shouts at Charles

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2yw2ejvy8o


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