別の見方をすれば、南のラテン系国家の生き方に、ドイツなどの工業国家の価値観を持ち込んだ結果として、貧富の差が拡大したともいえる。このようなことは多かれ少なかれ世界中で問題になっている。「世界で最も貧乏な大統領」といわれているウルグアイのムヒカ大統領が、ブラジルでの国連持続可能な開発会議(12年)で“持続可能な発展と世界の貧困をなくすテーマ”に対して語った衝撃のスピーチがある。
「皆さんが目指している大切なこととは、“現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似すること”でしょうか? 世界の70億人の人々がみんなグローバル化の名の下に貧困を脱することなどできません」と強調している。我々は常に豊かな国の経済メカニズムに支配されているが、実際の幸せとはそのような社会ではなく、背伸びをしない独自のもっと単純な愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つことだと指摘している。
今回、欧州を回ってみて、北部のドイツやフランス、ベルギー、オランダの人たちは経済的には成功しているわりに、何か落ち着きがないように感じた。一方で、経済的には成功しているとはいえないイタリア人のほうが、生活をエンジョイしていた。欧州は北と南で「アリとキリギリス」にたとえられることがある。一所懸命働いて裕福になっても何か満たされない「アリ」と、南イタリアで幸せに過ごしている「キリギリス」たちのどちらが良いのか……。繰り返し問われてきたテーマだ。
わが身を振り返れば、「アリギリス」というスタンスで時と場所、場面で対応を変えてきた。ドイツのやり方をイタリアに押し付けても上手くいかないし、その逆もしかりなのだと思う。
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