この状況の中で今もっとも活発な動きを見せているのが韓国である。韓国にとっては①北朝鮮軍の練度や武器性能の向上、②露朝協力の進展に伴う高度軍事技術の移転が直接的脅威であるか、加えて、③北朝鮮軍の能力や戦闘方法について直接情報を得る絶好の機会、という観点もある。
すでに韓国の軍・諜報部門の代表が北大西洋条約機構(NATO)、EUを訪問して情報共有ならびに協議を行っており、北朝鮮軍にかかる情報提供や、北朝鮮兵員に対する説得、捕虜の尋問、脱北希望者の収容の申し出等、非戦闘分野における協力は行われている。
また10月30日、韓国大統領府高官の発言として、韓国は北朝鮮軍の動向を把握し分析するチームをウクライナに派遣する必要性に言及したとされており、ウクライナに軍・諜報関係者が相当期間駐留する可能性が出てきている。
今、ウクライナの支援を強化できるか
今後の焦点は、韓国が基本方針としている「段階的措置」が露朝関係の如何なる動向に対してどのような措置をとっていくかである。韓国が何らかの形でウクライナに対し155mm砲弾などの装備を直接供与する方向に向かうか否か、またその際の北朝鮮側の反応がどのようなものかは欧州とアジア双方に影響を与える問題となる。
依然として戦況に最も実質的な影響を与えうるのが米国による軍事支援である事実は変わらない。その米国は、今も状況悪化を恐れて長距離兵器の使用制限解除に踏み込まない。
本件記事にあるように、ロシアの勝利を許してしまった後で欧州とアジアの安全保障情勢の変化に如何に対処すべきかを考えるのか、それとも今ウクライナに対する支援を大幅に強化して、リスクを冒しても枢軸国と対峙するかの選択が問われている。