2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月12日

 金正恩にとっての利益は、いまのところロシアからの技術移転と資金提供に集中しているが、金正恩は朝鮮半島での将来の紛争も見据えているのだろう。金正恩が欧州の戦争でロシアを支援した場合、ロシアはいつかアジアの紛争で恩返しをするかもしれない。

 これらは、米国、欧州連合(EU)、韓国にとって非常に難しい問題を提起している。彼らはいずれもウクライナと朝鮮半島の両方で状況悪化の回避に努めてきた。しかしすぐに、ロシアが北朝鮮の支援を受けてウクライナを負かすことを許した後で欧州とアジアの安全保障情勢の変化について考えるか、それともウクライナに対する支援を大幅に強化して、敵対する枢軸国と対峙する覚悟を持つか、その選択を迫られることになるかもしれない。
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活発化する韓国の動き

 ロシア、中国、イラン、北朝鮮の「枢軸」が現に機能し、特に北朝鮮とロシアの協力の深化の世界的な意味合いに注意を向けるべきとの本件記事の指摘はその通りであろう。

 確かに1万2000人という兵力はそれだけでは戦況に根本的な変化をもたらすとは考えにくいが、北朝鮮軍の派兵は今回で終了する保証はなく、また何よりも戦略的な観点から、ウクライナ戦争の世界的な安全保障への影響は少なくないだろう。

 10月29日、韓国情報当局は北朝鮮軍のうち一部兵力が戦線に移動した可能性があるとし、また10月28日にフォン・デアライエン欧州委員長と電話会談を終えた尹大統領は、「北朝鮮部隊の戦線投入が予想より早く進んでいる」と述べている。現状は、緊張を高め西側に脅しをかけるプーチンの戦略に北朝鮮が本格的に参加しつつあることを示している。

 プーチンは6月、北朝鮮と「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んだ。露朝条約は第16条で、任意の第三国が「一方的な強制措置」を適用する場合、露朝双方はその「直接・間接の影響」を「除去しあるいは最小にするための実践的な努力を傾ける」と規定している。

 これらに対し、現時点で欧米の対応は必ずしも明らかではない。明らかなのは、ATACMS長距離兵器の使用制限撤廃の問題について、米国防総省のシン副報道官が「長距離攻撃やATACMSの使用に関する方針に変化はない」と述べていることだ(10月24日)。


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