2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年11月11日

 その代表例がiPhoneだ。中国・河南省のフォックスコン工場はiPhone製造の中核的拠点だったが、サプライチェーン再編成のために一時は大幅に規模を縮小する計画だった。しかし、今夏になってから再び工員を増員し、製造能力削減は棚上げされた。

 インドやベトナムなど別の拠点では米アップルが満足するだけのクオリティとコストを実現できなかったためとみられる。ビジネスと政治の板挟みの中で、外資系企業も中国拠点をどう扱うか、難しい判断が迫られる。

企業それぞれへの影響

 さて、中国経済は2023年1~9月に実質経済成長率4.8%増を記録した。このまま推移すれば「5%前後」という政府目標はクリアできる。ただし、増加分の内訳は消費が2.4ポイント、投資が1.3ポイント、純輸出が1.1ポイントという構成だ。

 米国が大幅に関税を引き上げれば、この輸出がマイナスに転じることも十分に考えられる。25年以降の経済成長には大きな重石が乗っかることになる。

 企業レベルで見れば、東南アジアやメキシコに中間財(部品)を輸出し、最終加工をした上で米国に輸出する迂回策を採ることが予想される。ただし、この場合も中国国内の雇用は一定程度失われることになる。景気減速で雇用対策に苦慮している中国経済にとっては打撃だ。

 また、関税引き上げは米国のインフレを加速させる。これは米国経済および米国人の家計にとって打撃となるが、インフレ対策としてドル金利が再上昇すればドル高元安に振れるという副産物を生む。

 中国は資本規制をしき資金の海外移動を制限しているが、経済が先行き不透明であること、人民元安のトレンドが強いことを背景に資本流出が続いている。米誌ウォールストリートジャーナルの推計によると、23年7月から今年6月までに2540億ドルもの資金が、資本規制をかいくぐって海外流出したとされる。

 本来ならば、経済が低迷している中国は大胆な利下げによって景気を刺激したいところだが、資金流出のリスクを考慮してそうした手段を打てずにきた。米国が利上げすれば、中国当局は金融緩和の選択肢をさらに失ってしまう。


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