2024年11月20日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年11月20日

 国内で凶悪な事件が起きると、それも報道される。日本では「中国では情報統制されていて報道されない」、あるいは「すぐに削除される」と言われており、一部はその通りだが、一部では誤解もあると感じる。

 日本では「社会に不安を与えるため、また事件が連鎖しないように情報統制する」と言われているが、すべての報道が削除されているわけではない。ホット検索ランキングにはランクインしない(あるいは、ランクインして注目を集めないように微妙に統制されている可能性がある)までも、さまざまなワードを入力して報道を見つけ出すこと自体は可能だ。

 たとえば、直近の江蘇省の職業専門学校で男が学生を刺殺した事件も、大ニュースとしての扱いではなかったものの、報道自体はあった。筆者は職業柄、記事や写真を見たら、すぐにスクリーンショットをとる(証拠をとる)癖がついているが、同事件についての報道もいくつか切り取って保存している。また、コメント欄も閉じられているわけではなく、「怖い」「犯人を厳罰に処してくれ」などのコメントは現在でも見られる。

 むろん、コメント欄の一部や報道の一部は統制されている可能性があり、「事件が起きたのは政府のせいだ」といった政府にとって都合の悪いコメントは削除されている可能性もある。ただ、そうした削除がなされているかどうかを確認すること、またはないことを証明することは不可能だ。

確実に「統制」がなされた形跡も

 しかし、23年10月、李克強元首相が突然亡くなった際は違った。国家の重要人物の死去という大ニュースであり、政府系メディアも死去について速報した。だが、第一報のあとは不自然な点があった。

 李元首相が幼少時代を過ごしたとされる安徽省合肥市の旧居に、市民から膨大な数の花束が捧げられたが、それが予想以上に多かったからか、追悼の言葉や、その現場の写真などは一部で閲覧不可となり、この報道に関する記事のコメント欄は閉鎖されるという事態となったのだ。

 そして、死去から2日後、早くも報道はトーンダウンし、SNSの投稿もめっきり減少した。追悼の声が一気になくなったことについて違和感を覚えた人も多かったようだ。


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