また、22年、コロナ禍で上海が約2カ月にわたってロックダウンされた際は、明らかに情報統制されたことも事実だ。上海の人々が「社区」と呼ばれるマンションの管理人などに不自由さを訴えたり、政府に対する不満をSNSに書き込んだりしたものは、早いものでは数分以内、あるいは1時間以内に削除され、筆者もそれを目の当たりにした。
統制されても情報を得る中国人
だが、現在の中国では、国内の情報が統制されていたり、不自然に情報が出てこないことについて、ある程度の教育を受けた中国人ならば織り込み済みであり、それを念頭に置いて国内ニュースを見ていることが多い。むろん、不満には思っているが、中国に住んでいるかぎり、やむを得ないと感じている人も多い。
もし、もっと多くの情報を得たいなら、今では海外から中国情報を得ることができる。筆者の著書などでも紹介しているが、VPN(仮想私設網)などを使って日本や欧米のニュースを探して読むことができるのだ。
また、大ニュースならば、82万人以上の在日中国人も、日本での報道をベースに、日本から情報を発信しており、それを中国に住む人も目にすることができる。欧米に住む中国人からも情報を得ることはできるので、国内で報道されていないからといって、そのニュースが「なかったこと」にはならない。わざわざ日本のX(旧ツイッター)を見て、確認することを日常的に行っている若者も多い。
もちろん、海外の情報にアクセスする術をすべての中国人が持っているわけではないので、政府の情報統制もまだ〝効いている〟わけだが、徐々にその「ほころび」が出てきていると感じる。昨今の日本でも、オールドメディア(テレビや新聞、ネット記事)よりもSNSの情報を信じるという人が増えており、一体、何が真実で、何が真実でないのかを見極めることは非常に難しくなっているが、中国ではそれとは別の意味で、情報は常に敏感な問題となっているのだ。