2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年11月22日

日本のインフレと衆議院選挙

 図2で日本の状況を見ると、20年のコロナショックによって失業率が上昇し、物価上昇率が下落した。財政金融両面の景気刺激で失業率は低下したが、エネルギーと食料価格の高騰により消費者物価(生鮮食品を除く総合)も対前年比で4.2%まで上昇した。

 ただし、物価は徐々に収まりつつあり、24年9月には2.4%となった。なお、消費者物価総合とエネルギーと食料を除いた総合の違いが、日本よりアメリカで大きいのは、アメリカが車社会で、ガソリン代の消費に占めるウエイトが大きいからである。

 筆者は、十分な根拠がある訳ではないが、エネルギーや小麦などの食料価格の高騰は外国のせいで、日本政府としてほとんどどうしようもないことを国民は理解しているのではないかと思う。

 ただし、政府ができることもある。エネルギー価格の高騰に対して、政府はガソリン補助金をばらまいて対応している。これは財政赤字を増やす政策だが、財政赤字が直ちにインフレを起こす訳でもないので、それなりの効果はある。

 食料価格のうち、コメの価格を抑えるのに財政支出は要らない。米価が上がったのは減反で供給を減らしたのせいなのだから、減反を止めれば米価は下がる。

 もちろん、どれだけ減反を止めればどれだけ米価が落ち着くのかを見極めることは難しい。減反を止めて米価が暴落したら困ると農林水産省は言うだろう。しかし、値段が4割も上がった米を2割前後の値上がりに抑えるための減反の停止幅ぐらいは見当がつくだろう。

 また、税や社会保険料は政府が決めることができる。これらを下げれば手取りの所得は当然に増える。国民民主党の「手取りを増やす」という言葉が選挙民に刺さった訳だ。これも財政赤字を増やす方策だが、電気・ガス・ガソリン補助金で累計12兆円以上使うことになるのだから、できないことでもないだろう。

 結局のところ、日本政府の政策によらず海外由来の物価高騰でみんなが困っているなら仕方がないが、政治家は裏金でうまくやっているのではないかという国民の不満が、自公連立政権を過半数割れに追い込んだのではないか。

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