アメリカ大統領選と失業率と物価
経済について言えば、筆者は、アメリカの実質国内総生産(GDP)は2%以上で成長し、失業率も低く、順調と思うのだが、人々はインフレに強い不満を持っているようだ。バイデン政権としては、コロナ不況に対応して、金融緩和の中で財政支出を増大させた結果、失業率は低下したが、物価が上がってしまったということだろう。
なぜそうなったかというと、失業率が下がると物価が上がるという関係があるからだ。経済が過熱して失業率が下がれば、人手不足から賃金が上がる。失業率が低いとは景気が良い訳だから、需要も強く、企業は人件費高に応じて物価を上げる。こうして、失業率は下がったが、物価が上がるということになった。
有権者は、失業率と物価の関係を必ずしも認識していないので、物価が上がるほど景気が良いから自分の仕事があるとは思わない。仕事があって一生懸命働いているのに、なんでインフレによって自分たちの賃金が目減りするのかと不満が募っている。
これに関して、日本とアメリカの失業率と物価上昇率(対前年比)を見たのが図1と図2だ。図1でアメリカの2020年のコロナショック後の失業率を見ると一挙に15%まで上昇した。その後、急激に低下していたのだが、21年1月に発足したバイデン政権が慌てて金融財政両面から景気刺激を続けた結果が物価の高騰だ。
ただし、この物価の高騰には、ロシアのウクライナ侵攻によって生じた世界的なエネルギー価格と食料価格の高騰分が入っている。それは消費者物価を、総合とエネルギーと食料を除いた総合で見ることで分かる。
図の右端にあるように、総合が9%まで上がっているのにエネルギーと食料を除いた総合は7%までしか上がっていない。ただし、エネルギーや食料価格の高騰は他の物価にも波及してしまうので、エネルギーと食料価格の高騰で生じた物価上昇はこの差よりも大きい。
また、コロナショックによって失業率が急上昇していたのもバイデン政権の失敗ではない。コロナ感染を抑えるには、人と接触せず、ステイ・ホーム(お家にいましょう)が必要なのだから、働くな、お店に行くなということになってしまう。これでは失業率が上昇するのはやむを得ない。
エネルギーや食料価格の高騰もバイデン政権のせいではないが、アメリカの選挙民にはバイデンが悪いと思われてしまったということだろう。