イスラエル軍は黙認
米ワシントン・ポストによると、ギャング団の黒幕はガザ南部やエジプトのシナイ半島に根を張るベドウィンの「タラビン部族」のヤセル・アブシャバブ一家。約100人の配下がいる。アブシャバブは襲撃を認めたものの、食料強奪は否定している。ハマスには長年抑えられてきた関係だ。
襲撃が行われたのはイスラエル軍の支配地域だが、問題は同軍が強奪を目撃しながら事実上黙認していることだろう。トラック輸送の安全を確保するよう求めた国連からの要請も無視したとされる。イスラエルはハマスに食料などが渡ることを恐れて支援物資のガザ搬入を渋ってきた経緯がある。
国連はイスラエル軍が武装集団の活動を“保護”していると疑っている。武装集団がハマスの復活を阻む勢力になることを期待する思惑があるようだ。
物資強奪の横行はガザの食料不足にとって最大の障害になっているが、人道支援関係者は「ガザはもはや無法地帯。特に北部の飢餓は深刻だ」と指摘している。ガザではイスラエル軍の攻撃で住民の犠牲は4万4000人を超えた。
英国はネタニヤフの逮捕状を執行方針
ガザの最悪な人道状況を改善するにはネタニヤフ首相の意向にかかっているが、首相に停戦する姿勢は見えない。刑事被告人でもある首相は戦争が終われば、昨年のハマスの奇襲攻撃を探知できなかった責任を問われて辞任せざるを得ない。戦争を続けることで、政治生命を維持しているのが現状だ。
すでにハマスの軍事部門を解体し、ガザの指導者だったヤヒヤ・シンワルも殺害した。残った最大の課題は人質の解放だ。80人前後がなおハマスに捕らわれているとみられている。人質解放交渉をないがしろにしていると非難される首相だが、このほど、人質を解放した者に1人につき500万ドル(約7億7000万円)を支払うと発表したが、本気で解放に取り組んでいるとみる向きは少ない。