2024年12月2日(月)

令和のクマ騒動が人間に問うていること

2024年12月2日

Hunter2 北海道占冠村農林課
浦田 剛さん

「誰か一人、フィールドで活動できる人間が地域のために愚直に取り組むしかない」。これが浦田さんの信念だ(TSUYOSHI URATA)

 「私の村の人はわながあまり好きではなくて……。特に、シカの捕獲にくくりわなはほとんど使っていません。シカを捕った後いかに美味しくいただくか、ということに強い意識が向く、そんな地域性があります」

 北海道占冠村の農林課林業振興室で働く浦田剛さん(47歳)は、村が雇用する野生鳥獣専門員だ。元々は地域おこし協力隊の一員としてこの村にやってきた。その穏やかな口調からは想像しづらかったが、自身で購入した猟銃でクマの駆除にあたるハンターだ。

 「市町村の役割は、『問題個体に適切に対応する』ということ。しかし、目撃したクマが危険な兆候にあるかどうかは、その時だけでなく継続的に見ていなければ判断できません。例えば、ごみに餌付いたクマであれば言わずもがな危険ですが、山中にある植物が市街地周辺にも生えており、それを食べに来たら市街地に出てしまった、という場合もあります。自分たちの地域に棲むクマのことをより深く知ることが大切です」

 村の職員として、猟友会をはじめとしたハンターが活動しやすいよう手続きの調整なども図る浦田さんだが、「必要な時にはハンターの方が出動するのを待たずして『自分自身が現場で対応できる』ということも大きな役割だと考えています」。

 同時に、「村として、ただ『ハンターの数を増やせばよい』というわけではありません」と話す浦田さん。

 「たとえ狩猟者の人数がそろっていたとしても、彼らの行動の動機が『獲物の獲得』『捕獲機会の拡大』に限られてしまっていたら、地域の対策は進みません。ハンターとして彼らの思いにも寄り添いながら、『どういう目的のために、いかに町を強くするのか』という、村のその先を共有することを大切にしています。

 ハンターの方も、その地域で暮らす、その地域の生活を良くしていきたいと願う仲間であることに変わりありません。ハンターも、そうでない方も含めて、『私たち』のあるべき姿を考えて、狩猟者を内包する地域社会の姿を描いていくことが何より大切です」

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Wedge 2024年12月号より
令和のクマ騒動が人間に問うていること
令和のクマ騒動が人間に問うていること

全国でクマの出没が相次ぎ、メディアの報道も過熱している。 しかし、クマが出没する根本的な原因を見落としていないだろうか。人間はいかに自然と向き合い、野生動物とどう生きていくべきか。人口減少社会を迎える中、我々に必要とされる新たな観点を示す。


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