2024年12月5日(木)

プーチンのロシア

2024年11月27日

 トランプ氏はこの時点ですでに、70人あまりの各国の指導者らと電話会談を行っていたといい、プーチン氏と会話をしたとしても決して不思議ではない。

 ただ、一方でロシア側が、そのような事実を公に認めるメリットは現時点ではあまりない。交渉の内容が表に出ることは、必ずしもロシアに優位な状況を生み出すとは限らない。またトランプ氏は、現時点でまだ大統領ではなく、あくまでも〝私的〟な会話にすぎないとの説明も成り立つ。

 ロシア側が電話会談の内容を否定するということに対し、トランプ氏側も目立った反論をしていない。両者の間では、ロシア大統領府が会談を否定することも、了解されていた可能性がある。

 ただ重要なのは、トランプ氏側から、ウクライナ戦争終結に向けた新政権の一定の方向性が示されたということだ。トランプ氏は、就任初日は無理でも、早期のウクライナ戦争決着を政権の最重要課題の一つと捉えている。政権が発足すれば、即座に停戦に向けた動きが加速すると予想される。

ロシアはウクライナのNATO加盟阻止要求

 プーチン氏は、〝幻の電話会談〟が行われたとされる7日の夜にはロシア南部ソチで行われた国際会議に登壇し、今後の交渉に向けた自身の意向も明確に示していた。

 プーチン氏は「たとえ就任式の前でも、会って会談する用意がある」とトランプ氏に秋波を送りつつ、そのような会談は「実際の〝領土の上〟における現実に根差したものでなくてはならない。さらに、イスタンブールにおける合意を土台としなくてはならない」と強調してみせた。これは、ロシアによる侵攻開始から間もない22年3月末に、トルコ・イスタンブールでまとまりかけたとされる停戦合意案だ。

 この協議については、ロシア軍が占領、撤退した地域で地元住民が虐殺されていた実態などが浮かび上がり、最終合意に至ることはなかったが、その内容は関係国がウクライナの安全を保障することと引き換えに、ウクライナのNATOへの加盟断念が盛り込まれていたとされる。ロシアの要求に大きく沿った内容であり、ロシアはこのラインにまで交渉を引き戻したい考えだ。

 さらに、「領土の上の現実」とは、ロシアによる〝ウクライナ領土の占領を認めろ〟との意見にほかならない。ロシアは、ウクライナのNATO加盟を断念させつつ、ウクライナ東・南部の占領を国際社会に認めさせる構えだ。

北朝鮮も巻き込み戦闘激化

 その後の事態は、停戦交渉の本格化をにらみ、占領地域の拡大を目指すロシアと、それを押し返そうとするウクライナの攻防が続いている。

 米主要メディアは11月17日、バイデン政権がウクライナに対し、北朝鮮によるクルスク州派兵に反撃するために、ロシア領内に対する米製兵器を利用した長距離攻撃を容認したと一斉に報道。ロシアによる進軍を食い止める目的で、20日にはウクライナ側への対人地雷の供給も決定した。

 これに対しロシアは19日、通常兵器による攻撃を受けた際に、核兵器の使用条件を引き下げる方針を決定。21日には、マッハ10を超え、核搭載も可能とされる新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」でウクライナ東部ドニプロを攻撃した。プーチン氏はさらに翌22日、オレシュニクを量産するとも発表した。


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