2024年12月5日(木)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2024年11月28日

 米国メディアにとっては、大谷はその時代時代に登場する傑出した選手の一人に過ぎず、利用できるところで利用するというのがその基本的なスタンスなのだろう。一方、翻って日本にとってはどうだろうか。度肝を抜く実力、米国人をしても恵まれていると思わせる体格、そしてこれが一番大事なのかもしれないが、日本人が昔から大切にしてきた価値観を異国の地において実践する姿、そういったものが合わさった不世出な存在である。

 大谷の一挙手一投足が、優秀な外交官や政治家が苦労しもなかなかできない日米の橋渡しになっている。貴重な存在なのである。

大切にしたい他のスポーツでの日本の「顔」

 そのような日本の「顔」となりうる大谷である。日本のメディアには、その場で大谷関連のコメントさえとれれば、インタビューを受けた大谷の周辺に居る人々が大谷の存在を疎ましく思うようになっても構わないという姿勢ではなく、大谷を扱ううえで、より一層の工夫と丁寧な取材が求められるのではないだろうか。

 そして我々も野球以外のスポーツでも、世界レベルで活躍している日本選手に目を向けるべきだろう。バスケットボールの河村勇輝選手の評価は日々高まっている。フィギュアスケート界で日本勢の活躍が続いているが、とりわけ今年のグランプリファイナル女子はなんと選ばれた参加6選手のうち5人が日本人である。強豪ロシアが不参加であることを差し引いても特筆すべきことである。

 また、他のスポーツでも4年に一度のオリンピックで突然日本人が知るところとなる世界レベルの選手も多い。これらの選手は常日頃海外で大活躍し、世界では日本の「顔」となっているにもかかわらず、である。

 ただ、これらのほとんどのスポーツに満足なスポンサーはつかず、選手は大変苦労しながら競技を続けている。その原因の一つに、マスコミがそれらの競技を十分とり上げないことがある。

 日本のスポンサーは大谷翔平には殺到し、ドジャーススタジアムでは広告を出す場所が足りないほどで、これまで日本の企業が見向きもしなかった地方球場にまで、対ドジャース戦が年間数ゲーム行われるというだけで広告費が流れ込んでいるという。日本のマスメディアは、大谷だけに集中するのではなく、色々な競技の様々な選手を応援して、日本の「顔」を育てていってくれればと願わずにはいられない。(文中敬称略)

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