「令和5年度水産白書」によると、現在日本には約2800の漁港が存在し、水産物直売所等の交流施設は1500カ所近くある。こうした施設などでの漁村の交流人口は約2000万人前後であるという。そこで漁港に都市在住者などを漁村にさらに呼び込み、お金を落としてもらい、漁村を活性化してはどうか、ということのようである。
観光などで漁村を盛り上げ、雇用と収入の増加を図る。建前としては結構な話のようにも見える。政治サイドからも、三崎が地元の選挙区でもある小泉進次郎衆院議員や石破茂首相が旗振り役となっている。
拡大一直線の「海業」発祥の地・三崎
「海業」発祥の三崎での実際はどうか。三崎と言えば全国でも有数の漁港、とくにマグロの水揚げで有名である。品川駅から電車とバスを乗り継いで90分、都心からのアクセスも良好だ。
こうした三崎漁港の観光スポットの中心の一つとなっているのが、「三崎フィッシャリーナ ウォーフ うらり」という名称の施設である。1階ではマグロや地魚、水産加工品、総菜などが、2階では野菜を中心に販売され、とりわけ週末ともなれば多くの観光客で賑わう。
家族連れなどがターゲットと思われる小型の観光船、レンタルボート、会場イケスの釣堀などもあり、駐車場も周辺に集中していることから、おそらく観光客の多くはここを訪れるだろう。三浦市の関連団体「三浦海業公社」が運営、三浦における「海業」の中心的施設となっている。
三浦市は「海業」のさらなる拡大を企図している。近接する「二町谷地区」の約7万平方メートルの空地を民間に売却、民間側が事業者となり海外の富裕層等をターゲットとした観光施設、宿泊施設、住宅等の整備を行い、国際的な経済活動拠点を形成するという、官民連携の壮大なプロジェクトを立ち上げた。
この大規模高級リゾート整備計画は政府により国家戦略特区に位置付けて進めることが決定され、21年3月の東京圏国家戦略特別区域会議に提出された資料によると、同年から開始した第一段階では浮桟橋設置、「インフラ整備」「マーケティング」による地域の価値向上イベント開催、仮建屋建築、第二段階として25年からヴィラ5~8棟、スモールホテル50室程度の建設、第三段階として27年からパブリックホテルの建設を目指すとされている。
上記の既存事業に加えてこの24年には、開業から20年以上を経過し老朽化が進んでいる「三崎フィッシャリーナ ウォーフ うらり」の改修を含めた三崎漁港における「新海業プロジェクト」を新たにスタートさせている。三崎での「海業」は拡大一直線だ。