田中投手が楽天に残れば、近い将来に球団幹部のキャリアという選択肢の可能性が高くなっていただろうが、現時点では、自らの現役生活をどう全うするかということへのこだわりが強かったという決断になったのだろう。
一般企業などのビジネスの世界においても、現場から管理職へとシフトしてマネジメントの道を歩むか、専門畑のスペシャリストの道を選ぶかで、その後のキャリアは大きく変わる。現役時代のキャリアは指導者としての有利な条件になるが、必ずしも、全ての選手が監督やコーチを目指すわけではない。田中投手の場合には、メジャー時代の年俸も高額で、金銭的な条件が決断を左右しにくい状況にもある。
もちろん、現役にこだわった選手も、野村氏や落合氏を例に出すまでもなく、その後に監督として名将と呼ばれるまでに実績を積み上げた例はある。昨季、阪神を日本一に導いた岡田彰布氏も現役の最後は、生え抜きの阪神を退団してオリックスへ移籍したが、後に阪神で2度にわたって監督を務めた。
田中投手の退団を責めるべきではない
「88世代」を牽引してきた田中投手が直面する事態は、この世代がこれから経験していく先例になりうることでもある。退団の是非をめぐって、一部のファンは田中選手に対して批判的にとらえる向きがあるが、実績を残してきた田中投手の決断は尊重されるべきだろう。
決断の先にどんな未来があるか。管理職ポストを意識する世代のビジネスパーソンにとっても、道標にもなるのではないだろうか。