イラク人は長い間、米国とイランという外国勢力をイラク国内から排除しようとして失敗しているが、イラクの各勢力は米国とイランの衝突から距離置こうとしている。イスラエル側が「イラクの抵抗」だけを叩き、人口密集地帯を攻撃しないようにすれば、イラク国内への悪影響は限定されるだろう。しかし、もし、イスラエルがシーア派の聖地の近くにある「イラクの抵抗」の拠点を攻撃したり、「人民動員軍」を攻撃したりすれば、事態の悪化を限定することは困難になろう。
米国も、イラクからイランの影響を排除したいと望んでいる。11月11日、米軍は、イラク国境近くのシリア領内の親イラン派民兵を攻撃したが、トランプ次期大統領が就任すれば、より積極的にイランの代理勢力を攻撃するかも知れない。
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イラン、イスラエルの思惑
イスラエルによるイランに対する2回目の報復攻撃の直後、イランが、イラクからイスラエルへの再報復を行うという報道が出回ったが、2回目のイスラエルの報復で手痛いダメージを受けたイランが、これ以上のイラン本土への損害を避けるためにイラクを利用しようと考えた可能性は確かにある。しかし、そうはならなかった。
それは、仮にイランがイラクの代理勢力を利用してイスラエルを攻撃しても、イスラエル側は攻撃の黒幕はイランだと判断してイランへの報復は避けられないだろう、とイランが判断したからであろう。これが交戦規則に従う米軍であれば、イラクの代理勢力が米軍を攻撃したならば、その黒幕がイランと分かっていても、あくまで直接的に攻撃した代理勢力に報復するに止めるだろうが、イスラエルは容赦が無い。
過去2回のイスラエルのイランへの報復攻撃に際して、イラクの領空が使われたのは間違い無いであろう。そして、現在、イラクの領空は米軍がコントロールしている。
イラン側としてはイスラエルの報復に加担している米軍を攻撃するのは十分に理屈が立つが、やはり、イランと相性の悪い次期トランプ政権の事を慮って自制しているのであろう。しかし、国内に武装した親イラン勢力が割拠している一方でイスラエルが自国領空を対イラン攻撃に利用している状況下では、イラク政府が、拡大しつつある中東の紛争に自国がいつ何時巻き込まれるか分からないと恐れるのは十分に理解出来る。
