2025年4月18日(金)

災害大国を生きる

2025年2月10日

 避難所運営は自治体の所掌とされていながら、地域の自治会長や公民館の館長が責任者を務めることが少なくない。そして、発災後の混乱の中で計画通りに運営ができないこともある。輪島市門前地区の指定避難所で責任者を務めた中口喜久夫氏は「発災後、避難所での話し合いの中で、責任者を任されることになりました。(国が制定している)避難所ガイドラインを見て、考えているような時間的余裕はなく、試行錯誤をしながら目の前の問題を対処するのに精いっぱいでした」と話す。

 輪島市では、指定避難所に住民を収容しきれないなど、地域の住民が自ら運営する「自主避難所」が最大155カ所設置されたという。自主避難所の運営を主導した澤田建具製作所(輪島市)社長の澤田英樹氏は、「男女30人の有志を集い、手分けして各教室の名簿を作成したり物資を調達したりしました。各家庭から炊飯器やコメを持ち寄り、おにぎりを握って配布もしました」と話す。

 災害初期の混乱の中では、行政も状況を把握できず、自主避難所に支援がいきわたらないケースもある。澤田氏が「命を守るために、自分に何ができるかを考え行動しました」と話すように、やむを得ない事態には「自助」の意識が欠かせない。

 防災とまちづくりに詳しい東京大学生産技術研究所教授の加藤孝明氏も「『公助は全て与えてくれる』という考えから離れ、一人ひとりの意識を高め、災害を乗り越えるために備える努力が必要です。理想の形は、自助・共助・公助が互いに高め合い、最大化されることです」と話す。

震災時に繰り返される混乱
国も対策に動くが……

 被災者一人ひとりが「避難所に行けばなんとかしてくれる」という考えを変えることも必要だ。しかし、だからと言って被災者の自助に依存するだけでは、日本の災害対応は改善されないままである。

 前出の浦野氏は1995年の阪神・淡路大震災以来、30カ所以上の被災地で支援活動を行ってきた。

 「被災者にも避難所の環境を問題視している人は多い。でも、改善するためには何をするべきで、どのような物品が必要か想像できず、状況を変えられないという現場を見てきました。避難所のグランドデザインを描く『経験者』の支援は必要でしょう。自治体にはNPOなどの民間セクターとの協働を前提に、避難所運営のあり方を共に考え実働できる関係性をつくってもらいたいですね」

 物資の備蓄も十分ではない。


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