2022年12月6日(火)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2014年3月5日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部 教授

東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所調査本部長、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

(図表4)ドイツ:ユーロ圏域内国別貿易収支の推移 拡大画像表示

 債務危機国の厳しい経済状況は、域内の貿易収支からも見ることができる。ドイツ以外のユーロ圏諸国のドイツとの貿易は大きな赤字が続いている。ドイツに対して2013年貿易黒字であった国は、域内16か国(除くドイツ)中オランダ、アイルランド、スロバキア、スロベニア、マルタの5か国に止まっている(図表4)。

 たとえば、ギリシャは対ドイツ貿易赤字国だが、対ドイツ貿易赤字はこの4年間でほぼ半減している(図表5)。しかし、それはギリシャの経済不振でドイツからの輸入が大きく減ったからで、ドイツへの輸出は全く増加していない。

(図表5)ギリシャの対ドイツ輸出入の推移
拡大画像表示

ドイツ経済の存在が最大の構造改革

 ユーロ危機以前の債務危機国の財政赤字拡大による実力以上の経済成長とインフレは、ある程度歯車を逆に回すことで解消するしかない。それは、マイナス成長とデフレでそれまでの過大な成長と価格上昇を相殺することであり、賃金と物価が下がることで域内外での価格競争力を増すという方向である。

 言い換えれば、現状の債務危機国の需要低迷やデフレなどの経済不振は、通貨統合したユーロ圏でギリシャなどが経済バランスを回復するために通らざるを得ない道であり、論理的帰結であるとも言える。

 このことは、競争力の強いドイツと通貨統合したことが、ギリシャ等債務危機国にとって厳しい経済状況を作りだしたと言うことでもある。しかも、債務危機国経済がドイツと一緒のユーロ圏で復活するには、債務危機国がドイツのような強い産業競争力を獲得するしかないようにも見える。

編集部おすすめの関連記事

新着記事

»もっと見る