2022年12月4日(日)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2014年3月5日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部 教授

東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所調査本部長、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

 2009年4月のIMFレポートでは、過去30年あまりの主要国不況の中からとりわけ深刻だった5つの金融危機を取り上げ、リーマンショック後の主要国経済動向と比較しているが、今回のユーロ圏の不振は五大危機と比べても際立っている(図表6)。

(図表6)金融危機後の実質GDP推移
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 その上、すでに1930年代大恐慌期のアメリカを超える失業率となっているギリシャやスペインで今後も経済や財政の調整が続くことは厳しいかぎりだ。今後の展開によっては、あまりに過酷な経済調整に耐え切れなくなって、ギリシャなどがユーロ圏を離脱する事態もあり得なくはない。

 一方、この調整努力こそがギリシャやスペインの経済がドイツ経済のような経済体質と競争力を獲得する方向でもある。今や、ドイツの存在が、債務危機国に過酷な経済調整を課す大元であるとともに経済構造改革を促す最大の要因となっており、ユーロ圏の景気回復の延長上には、体質が強化され、活性化したユーロ圏経済の姿がある。

日本にとっても不可欠な企業活力の活性化

 ユーロ圏経済の底入れは、日本にとっても他人事ではない。それは、経済成長が結局国民・企業の自助努力と生産性向上でもたらさなければならないということを示しているからである。

 日本経済は、過去1年間の円安や積極的な財政金融政策を大きな要因として回復している。しかし、経済成長を本来的に支えることが望ましい企業部門の努力がそこには前面には出ていない。現に、設備投資額はようやく13年10-12月期に前年同期比プラスに転じたところであり、賃上げも劇的には進んでいない。

 もちろん、企業活力が活性化するには、企業を取り巻く経済環境の好転が欠かせず、円高の大幅修正やデフレ脱却などは好ましい。しかし、一刻も早く企業活力が発揮されなければ、ふたたび低成長とデフレに陥るといった事態が再燃しないとは限らない。

 ドイツと同じユーロ圏にいる債務危機国とは異なり、プレッシャーがない中で企業が自助努力を強めなければならないのは大変だ。しかし、企業減税に加えてTPPや国家戦略特区などの枠組みも最大限活用しながら、企業活力の回復を図っていくしか日本経済活性化への道はない。ユーロ圏経済の底入れは多くのことを示しており、日本がそこから学ぶことは大きい。


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