安保激変

2014年3月18日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

新たな戦略的発想に欠ける内容

 今年のQDRは、「2012年国防戦略指針の上に立つもの」と本文でも認めるとおり、大半が2012年戦略国防指針で示されたものを継承したものだ。その枠内の中で、戦略目標として(1)米国本土の防衛、(2)国際安全保障の構築、(3)決定的な勝利を収めるための戦力投射、の3つを掲げ、この目標を達成するために米軍は(1)本土防衛、(2)地域的に分散された環境での対テロ作戦の継続、(3)複数の地域における前方展開と関与を通じた同盟国への保証と侵略の抑止、の3つを同時に追及することができる態勢を整えることを目指す、としている。

 地域的なフォーカスとしては「アジア太平洋へのリバランスは継続」するとしつつも、中東が引き続き懸念地域であることをより明示的に認め、2012年国防戦略指針ではあまり触れられていなかった欧州との関係も、引き続き同盟関係を重視していくことがよりはっきりと書き込まれた。その一方で中南米やアフリカなどへの言及は非常に少なくなっている。

 また、「より現代的で能力があり、即応態勢を備えた」兵力であり続けるために統合軍たる米軍が能力の再構成を進めるにあたって国防省が今後、力を入れて投資する分野は(1)サイバー、(2)ミサイル防衛、(3)核抑止、(4)宇宙、(5)空間・海上(エア・シー)、(6)精密攻撃、(7)情報・収集・偵察(ISR)、(8)テロ対策・特殊軍、の8つの分野となることも明記された。

 そしてやはり、予算の制約に関連する記述が突出している。前述のとおり、国防予算の制約が米軍の態勢に与え得るリスクについてまるまる1章割いて論じ、その他の部分でも至るところに予算の制約を意識した表現が散りばめられている。つまり、今回のQDRの特徴をあげるとすれば、国防予算は今後当面の間、圧縮傾向が続くという前提の中で、同盟国との関係強化や前方展開兵力の維持の重要性を強調することでこれ以上の国防予算削減を回避しようとしている、防戦一辺倒のQDRである、ということだ。

厳しい外部識者の評価

 新しい戦略構想を提示し、その上にたった将来の米軍の在り方を論じる、というQDRが当初目指していた目標と対局に立っているといっても過言ではない今回のQDRに対する評価は総じてあまり高くない。どちらかといえば、2015年度国防予算と同日発表したことがかえって仇となり、2015年度国防予算に対して向けられている批判が、そのままQDRへの批判につながっている。

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