日本で動き出した
民間主導の「宇宙港」
現在、民間や自治体主導でインフラを確保する動きがある。ロケットの射点のみならず、研究開発施設なども併設された宇宙へのアクセスの拠点として「宇宙港(スペースポート)」の整備が各地で進んでいる。検討段階のものも含めると、北海道、福島県、和歌山県、大分県、沖縄県、洋上に6カ所。さらに、今年2月には高知県も名乗りを上げた。
宇宙戦略基金にも採択され、動きを加速させているのは北海道大樹町だ。同町は地理的優位性を背景に1985年から航空宇宙産業基地の誘致を進め、21年に「北海道スペースポート(HOSPO)」を本格稼働した。HOSPOを運営するスペースコタン最高戦略責任者(CSO)の降籏弘城氏は「これまでの射場はロケットに合わせて造られていたため、特定のロケットのみを打つことが当たり前だった。我々は基金に採択された研究を通じて、射場とのインターフェースや燃料などの供給方式が異なる複数種類のロケットを打つことができる国内唯一の射場を目指している。簡単ではないが、成果が出れば国内外問わず、幅広い顧客を獲得できる」と語る。
同町では、宇宙関連企業などの誘致を進めることで「宇宙版シリコンバレー」の形成を目指す。大樹町航空宇宙推進室長の菅浩也氏は「打ち上げにおいて関係者は準備期間も含め、長期間この町に滞在することになる。短期の観光だけでなく、町の産業を充実させ、仕事の拠点としても魅力的な場所にすることで、HOSPOを起点に町全体の成長につなげたい」と語る。
本州最南端の地にも、スペースポートが町の活気につながっている場所がある。「スペースポート紀伊」は和歌山県串本町にある日本初の民間ロケットの射場だ。24年には軌道投入には至らなかったものの、2回の打ち上げに挑戦した。
民間の射場を整備した経緯について、スペースポート紀伊を運営するスペースワン(東京都港区)執行役員の阿部耕三氏は「自社で開発したロケットを自由に、そしてスピード感を持って打ち上げるには射場というアセットは必須だった。地元自治体も観光や雇用、税収などの経済効果を見込んで全面協力をしてくれ、二人三脚で事業を進めてきた。昨年の打ち上げの際には見学場も満員になるなど、地元への貢献も肌で感じられるようになった」と話す。
今年2月にはスペースポート紀伊を見学するツアーを初開催した。大学時代の友人と参加していた和歌山県在住の土田実さん(58歳)は「県内では打ち上げのたびに盛り上がりを感じる。県外も含め、もっと多くの人が宇宙に興味を持ったり、和歌山に足を運んでもらえるよう、こうしたツアーのようなエンタメに、もっと力を入れてほしい」と話す。

ガイドの案内に熱心に耳を傾けていた広島県から参加した18歳の青年は全国各地の宇宙関連の施設を巡っているという。「将来、宇宙に関わる仕事をしたいと思っているが、現場を見られる機会は多くなく、こうしたツアーはとても貴重な経験だ。今度は打ち上げを見にきたい」と目を輝かせていた。
JR串本駅前の広場には漫画『宇宙兄弟』の登場人物が描かれた大きなパネルが観光客を出迎え、町の老舗和菓子店には「ロケット饅頭」が並ぶ。さらには、地元の県立串本古座高等学校に24年度から宇宙専門のコースも新設され7人が入学した。スペースポートを軸に、宇宙産業が町全体を盛り上げていると感じた。