2025年4月9日(水)

BBC News

2025年4月1日

トランプ米大統領

グレアム・ベイカー、BBCニュース

ドナルド・トランプ氏は、アメリカ大統領として3期目を務めたいと考えていることについて「冗談ではない」と発言した。

アメリカ合衆国憲法は「いかなる者も2度以上選出されることはない」と定めている。しかし、一部のトランプ支持者は、憲法の制限を回避する方法があるかもしれないと提案している。

なぜ3期目が話題に

トランプ氏は米NBCの番組のインタビューで3期目を目指す可能性について尋ねられると、「それを実現する方法はある」と答えた。

「冗談を言ってるわけじゃない。(中略)私にそうして欲しいと大勢が望んでいる」のだとも、大統領は付け加えた。「けれども、その人たちには要は、まだ長い道のりがあると話している。まだ政権のかなり初期だと」とも述べた。

トランプ氏は現在の2期目を終えた時には、82歳になっている。「この国で一番厳しい仕事」を続けたいかどうか尋ねられると、 「まあ、仕事をするのが好きなので」と答えた。

この件について、トランプ氏が発言するのはこれが初めてではない。今年1月には支持者らに対し、「1度ではなく、2度、3度、あるいは4度も(大統領として)尽くすことができれば、人生最大の栄誉だ」と述べた。しかし、トランプ氏は当時、これは「フェイクニュースメディア」向けのジョークだと付け足した。

憲法は何と

合衆国憲法は一見すると、3期目の任期を一切禁じている。憲法修正第22条には次のように記されている。

「いかなる者も、2回を超えて大統領の職に選出されない。また、他の者が大統領として選出された任期のうち、2年以上にわたり大統領の職にあった者あるいは大統領の職務を行った者は、いかなる者も1回を超えて大統領の職に選任されない」

改憲には、連邦議会の上下両院で3分の2以上の議員の賛成と、州政府の4分の3以上の承認が必要だ。

トランプ氏が率いる共和党は議会両院で多数議席を得ているものの、改憲案を通すために必要な3分の2以上の多数は持っていない。さらに、野党・民主党は全50州の州議会のうち18州で多数党になっている。

ではどうやって3期目を

トランプ氏の支持者たちは、憲法の抜け穴があると主張している。裁判で争われたことのないものだ。

憲法修正第22条は大統領に2期以上「選出」されることをはっきり禁止しているだけで、「継承」については何も言及していないというのが、その言い分だ。

この理論によると、トランプ氏は2028年の大統領選で別の候補者(おそらく現政権のJ・D・ヴァンス副大統領)の副大統領候補になることができる。選挙でこの陣営が勝ったあかつきに大統領候補は、宣誓就任した直後に辞任する。そして、継承順位1位の副大統領が代わりに大統領になる。つまり、トランプ「副大統領」が継承によって大統領になるというからくりだ。

トランプ氏の元戦略顧問で今はポッドキャストで司会を務めるスティーヴ・バノン氏は、トランプ氏が「再び出馬して勝つ」と信じていると発言。その方法については「いくつかの選択肢」があると付け加えた。

アンディ・オーグルズ下院議員(共和党、テネシー州)は1月、連続の任期でない場合に限って大統領が最長3期まで務められるよう、改憲要求の決議案を提出した。

これが実現した場合には、存命の歴代大統領の中ではトランプ氏のみが資格を持つことになる。バラク・オバマ氏、ビル・クリントン氏、ジョージ・W・ブッシュ氏はいずれも連続して2期を務めたからだ。トランプ氏は2016年に勝利し、2020年に敗れ、2024年に再び勝った。

ただし、アメリカでは憲法改正が実現するための条件が非常に厳しいため、オーグルズ議員の改憲案は夢物語だ。ただし、話題にはなったし議論のきっかけにもなった。

トランプ氏3期目に反対しているのは

民主党は強く反対している。

「これは政府を乗っ取り、この国の民主主義を解体しようと明確に取り組んでいる(トランプ氏が)、またしてもその取り組みを強化している」のだと、ダニエル・ゴールドマン下院議員(民主党、ニューヨーク州)は批判した。同議員は、トランプ氏に対する最初の弾劾決議で、民主党側の弁護団のトップだった。

「共和党議員が憲法を信じているなら、3期目を目指すトランプ大統領の野望に、公式に反対するはずだ」とも、同議員は述べた。

トランプ氏が率いる共和党内にも、3期目はまずい考えだとの意見をもつ人もいる。

オクラホマ州選出のマークウェイン・マリン上院議員(共和党)は2月、トランプ大統領の3選を目指す動きには賛成しないと発言した。

「そもそも、憲法を変えるつもりはない。アメリカ国民がそう選択するなら別だが」と、マリン議員はNBCに話している。

法学者は何と

米ノートルダム大学のデレク・ムラー教授(選挙法)は、合衆国憲法修正第12条が「大統領の職に就く資格が憲法上ない者は、合衆国副大統領の職に就く資格はない」と定めていると指摘する。

これはつまり、大統領を2期務めた後に副大統領候補として立候補する資格はないという意味だ。

「大統領の任期制限を回避するための『奇妙な秘策』はないと思う」と、ムラー教授は話した。

ボストンのノースイースタン大学のジェレミー・ポール教授(憲法学)は米CBSニュースに対し、3期目を可能にする「説得力のある法的根拠はない」と述べた。

2期以上務めた大統領は

フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト氏は、大統領に4回選ばれた。そして、4期目開始から3カ月後の1945年4月に死去した。

ルーズヴェルト政権には、大恐慌と第2次世界大戦が多大な影響を与えた。そして、任期が重ねられた理由にもなったと、よく言われる。

アメリカ大統領の任期を2期までとする規定は当時、成文法としての明記がなく、1796年にジョージ・ワシントン大統領が3期目を拒否して以来の慣例として守られていた。

ルーズベヴェルト大統領の長期政権を機に、慣習上の伝統は1951年に憲法修正第22 条で法律として制定された。

(英語記事 Can Trump serve a third term as US president?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy0xg887615o


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