2025年4月9日(水)

BBC News

2025年4月2日

赤いひし形の紙に墨と筆で「福」と書いている様子

オーストラリアの複数の大学が、キャンパス内にある、中国政府が出資する教育機関「孔子学院」をひっそりと閉鎖していたことが分かった。

孔子学院をめぐっては、中国政府がプロパガンダを広めたり、中国人留学生に関する情報をひそかに集めたりするのに利用しているとの懸念があり、オーストラリア政府は近年、監視を強化していた。

中国は、外国で中国の言葉や文化を教える孔子学院を「世界との友情を強化する懸け橋」だとしている。

しかし、孔子学院を通じた国外での中国政府の影響力に対しては懸念が高まっており、アメリカやヨーロッパでも、大学が支部を閉鎖した例がある。

孔子学院を閉鎖したのは、メルボルン大学、クイーンズランド大学(UQ)、西オーストラリア大学(UWA)、ニューサウスウェールズ大学(UNSW)、ロイヤル・メルボルン工科大学(RMIT)。

また、アデレード大学も閉鎖したとみられると、オーストラリア放送協会(ABC)は報じている。同大学の広報担当者は閉鎖を認めなかったものの、パートナーシップや教育協力を通じて「中国を含む他国とのつながりを育み」続けるとしている。

これにより、オーストラリアの大学にある孔子学院のほぼ半数が閉鎖されたことになる。ABCによると、残る7カ所の孔子学院はまだ運営されている。

いくつかの大学は、新型コロナウイルスのパンデミックでの混乱を理由に、孔子学院の契約を更新しなかったと説明している。

UNSWの広報担当者は、同大学が独自の中国研究プログラムを開発しており、「中国とオーストラリアの二国間関係におけるオープンな対話を促進すること」にコミットしていると述べた。

豪政府は近年、中国共産党と関連のある孔子学院について、国内での新たな開設を許可しないと示唆していた。

また各大学に対し、孔子学院の教育内容についてより透明性を持たせることを要求し、一部の大学には、外国影響力透明化制度への登録を求めた。

UQの広報担当者は、孔子学院が2024年12月に契約満了で閉鎖されたと述べ、政府からの指示は受けていないとした。

メルボルン大学は、2007年に南京大学との提携で設立された孔子学院を2024年8月に閉鎖した。

同大学はすでに多様な中国語およびアジアプログラムを提供しており、「契約を更新する追加の必要はない」と広報担当者は述べた。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは2019年の報告書で、孔子学院は「中国政府の延長」であり、中国政府にとって政治的に敏感な問題の議論を検閲していると述べた。

2019年にABCが報じたところによると、オーストラリアでは孔子学院のボランティア教員の応募者は、中国政府への政治的忠誠を示す必要があったという。

豪フリンダース大学で孔子学院を研究しているジェフリー・ギル博士は、今回の閉鎖には「驚かなかった」と述べた。また、外国からの干渉に対する懸念が「一因である可能性が高い」とABCに語った。

一方でギル博士は、孔子学院が「中国政府のプロパガンダを広めている」とは考えておらず、「オーストラリアや西洋世界における中国の認識にほとんど影響を与えていない」と指摘した。

(英語記事 Top Australian universities close Chinese Confucius Institutes

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4g7dgrw5zno


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