ウクライナ鉱物資源開発の光と影
著者は、レアメタルの専門家として、ロシア、ウクライナ、中央アジア諸国には200回以上資源開発を目的に訪問した経験があり、ウクライナのレアアース資源には、経済合理性はないと理解している。米国の地質調査所(USGS)のデータでも、ウクライナの鉱物資源(例えばレアアース)は、限られているとされている。
それにもかかわらず、トランプ大統領をはじめとする西側諸国はウクライナに対して鉱物資源の共同開発を提案している。この提案の背景には、ウクライナの地政学的重要性がある。つまり、米国が経済的なつながりを持つことで、ウクライナにとっても事実上の安全保障が成り立つということだ。この発想は米軍基地を置く日本の立場と同じ理屈である。
米国の資源企業が鉱物資源産業のサプライチェーン(鉱山の探査、採掘、分離選鉱、電解加工、流通、販売)に至るまでの流れを支配すれば、米国とウクライナはウィンウィンになる。
こうした米国の論理はよくわかるし、トランプ氏や支持者や議会に政治的な勝利をアピールできるだろう。ただし、別の見方をすると、専門家からみて資源開発案が「砂上の楼閣」だとわかる話なら、米国内でも賛成を得られず、成立しないのでは? とも考えられる。
それでも、多少時代遅れだが、ウクライナのチタンやガリウムなどの商業鉱山や精錬所はあるので、「中国依存度」を下げるだけでもプラスとなる。もう一つ。実現へのハードルは高いだろうが、ロシアの利益・主張を取り込むこともポイントになる。ロシアを含めた多様性のある産業の再構築は、持続性のあるロシア・ウクライナ経済圏の発展に資すると考える。