これが、米国の軍事支出に関する議論の背景となる、アジアの現実である。ヘーゲル国防長官は、ペンタゴンは作戦上の焦点と軍事力を、アジア太平洋にシフトし続けるであろう、と言っている。しかし、日本やフィリピンのような同盟国は、米国が部隊と戦闘機を大幅削減しようとしている時に、ヘーゲル長官の発言を聞いて、勇気づけられるであろうか。そして、中国のような潜在的競争相手は、抑止されるであろうか。
上海での会議の参加者は、少なくとも私は、中国が強力な米国に屈し続けるであろうという希望を、吹き飛ばされた。我々は、明らかに、特に海洋問題で、中国がより強い自己主張をする時代に入りつつある。
上海での議論は、戦略家たちが中国のパワーに対するオフショアバランサーとみなす米国の役割について、米国が今後どうするのかという点にも焦点を当てた。
米国は、日本の施政下にある尖閣を防衛する、条約上の義務を負っている。米軍は、中国の「電撃作戦」を打ち負かす計画を持っている。しかし、米国は、数個の岩をめぐる戦争に引きずり込まれたくないので、ワシントンは、東京に対しても注意を発している。
尖閣の状況は、中国が海警の艦艇や航空機を毎日、島の周りに張り付かせていることで、緊張が高まっている。日中は、危機コミュニケーションのチャンネルを必要としている。
南シナ海では、中国の野心は、いわゆる9点線を含んでいる。これは、米国から見れば何ら法的根拠を持たず、中国は、この線が何を表しているのか定義しようとすらしない。フィリピン政府は、国際調停を求め、9点線に挑戦している。中国の海洋進出に、法的制約が置かれることになるかもしれない。
中国の当局者は、国際会議で会うと、しばしばウィン・ウィンの協力関係と言うが、太平洋地域の現状を見ると、そういう妥協の精神が功を奏するとは到底思えない、と指摘しています。
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この論説は、イグネイシャスが、Shanghai Institutes for International StudiesとGerman Marshall Fundが毎年共催している、Stockholm China Forumに参加して得た感触を披露したものです。イグネイシャスが中国の海洋進出を真正面から取り上げたのは恐らく初めてだと思いますが、東シナ海、南シナ海における衝突の可能性が高まっているとして、中国の姿勢に懸念を表明しています。