2025年12月6日(土)

トランプ2.0

2025年5月22日

政治的な党派に限らない動き

 上記のような法律論をタテにした訴訟とは別に、ニューヨーク、カリフォルニアなど12州は、各州および州民が「関税」という名の「前例のない増税」によって甚大な損害を被ることになるとして去る4月23日、12州司法長官連名で差し止め訴訟に踏み切った。

 国際貿易裁判所に提出した訴状によると、「トランプ関税は各州および州民に深刻な経済的打撃をあたえるのみか、失業を増大させ、物価高を招き、賃金低下に拍車をかけ、さらには貿易相手国との信頼関係をも棄損させる」ことなどを理由に挙げている。

 このうち、ニューヨーク州の場合、経済専門家の試算によれば、ニューヨーク市だけで3万5000人の失業者を生じさせ、物価高騰による州出費が最低でも1億ドル膨れ上がるほか、多くの零細企業にとってカナダから得ている電力コストなども高騰を招く結果になるとしている。

 また、トランプ関税の影響を受け、同州中部地区の伝統ある地方紙として知られる「コートランド・スタンダード」が最近、経営難から廃刊を発表したとも報じられている。

 政治メディア「Politico」の報道によると、トランプ関税に反発する一連の訴訟の最大の特徴は、民主党系自治体や法律家グループのみならず、共和党系の「Cato Institute」などのようなシンクタンクや、超保守派市民運動「リバタリアン」など草の根的広がりを見せている点にある。

 とくに米国発祥とされる「リバタリアン」政治思想は、個人の自由や権利保護を最重要視し、国家の加入を最小限に抑えようとする考え方に依拠しており、貿易などの経済的自由も含まれている。「リバタリアン」にとって、トランプ関税は最たる国家介入を意味する。GAFAに代表されるIT起業家の間に支持者が多い。

 また、若者を中心に支持者が多く、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学内調査によると、回答者の23%が自らの思想基盤を「リバタリアン」としているという。

 今回のトランプ関税に限っては、珍しく超党派的反対運動の盛り上がりを前に、法廷がどのような裁きを見せるのか、その結果次第では、米国内のみならず、世界経済に大きな影響を与えるだけに、関心は高まるばかりだ。

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