バイデン政権は、「経済繁栄のための米州パートナーシップ」と称して、親米諸国に対し半導体やクリーンエネルギー分野での投資促進と起業および競争力とサプライチェーンの強靭化に取り組んだが、十分な成果を上げたとはいえず、トランプ政権による引継ぎもない。個別のディールを重視するトランプには、マルチの仕組みを活用する発想はなく、米国が参加するOAS(米州機構)をベースとする米州サミットの見通しも立っておらず、中国のラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)プロセスを通じた効率的なアプローチに対抗できるか疑問である。
米国に近い国々も要注意
メキシコ、パナマ等、トランプ政権の圧力が効果を持つ国もあり、メキシコは中国からの輸入制限や投資審査の厳格化等の措置を取っているが、ラテンアメリカ全体に対して表向き中国からの投資や技術協力を止めるように要求することはできないであろう。宇宙関係の協力には人民解放軍の関与があり、また、ロードマップに軍事や安全保障面の協力が盛り込まれるようなことを防ぐためには、外からの圧力だけではなく、米国にとり何がレッドラインかを明確に示しCELAC内に米国の利益を代弁する信頼できる同盟国を持たなければならないだろう。
米国との関係を重視するメキシコ、グアテマラ、ドミニカ、本来は親米派であるはずのパナマ、個人的な盟友関係を任ずるミレイのアルゼンチン、右派が政権を維持しているパラグアイやエクアドルなどとの関係を特に強化することが重要であろう。ラテンアメリカ外交に熱心に取り組んでいるルビオ国務長官の二国間外交の重点はそのようなところにもあるはずである。

