2025年6月15日(日)

プーチンのロシア

2025年6月6日

 どんな国でも、乗用車販売は、景気のバロメーターとなる。そこで、ロシアの新車販売動向を見てみると、25年1~5月の販売台数は前年同期から28%も減少しているのである。トラック販売台数に至っては、前年同期比で実に52%も落ち込んでいる。

 超高金利社会のロシアでは、自動車ローンの金利が30%前後に上っており、これではクルマが売れないのも無理はない。選択肢がロシア車および中国車しかなくなり、ユーザーの食指が動かないのもある。

まだら模様の鉱工業生産

 ロシアでは、戦争が始まってから経済統計の開示が後退しており、鉱工業生産の統計も機微なところは隠すようになった。それでも、依然としてロシア経済の実情を窺い知ることのできる貴重な情報源ではあるので、ここではそれを吟味してみることにしよう。

 図2に見るとおり、鉱工業全体の生産は、23年、24年と高い伸びを示した後、25年1~4月には前年同期比1.2%増へと鈍化している。概ねGDPと同じような動きを示している。

 もともとロシアで強みがあったのは鉱業(マイニング)、つまり石油・ガスをはじめとする地下資源の採掘業であった。もちろん製造業の比率も大きかったが、その国際競争力は決して高いものではなかった。鉱業というドナーが、国全体を養っている形であった。

 それが、22年2月のウクライナへの全面侵攻開始後は、本来の花形である鉱業が不振に陥り、代わって製造業が主役に躍り出ている。図2に示されているように、鉱業は資源価格が高かった22年こそプラスだったが、その後は価格が落ち着き、また対ロシア制裁が本格化するにつれ、減産に陥っていった。

 25年1~4月の鉱業は、前年同期比マイナス3.0%であった。困ったことに、ロシアは23年3月分以降、最重要な石油・ガス部門の伸び率を発表していない。ただ、25年1~4月には、石炭はプラス3.6%、金属鉱石はプラス2.6%となっているので、それだけ本丸の石油・ガス部門の数字が悪いのだろう。

 一方、製造業は23、24年に躍進し、25年1~4月でも前年同期比4.2%増と比較的高い伸びを維持している。そして、製造業の急成長を支えてきたのが軍需生産であったという点で、衆目は一致している。

 しかし、一見好調に見える製造業も、良く見るとまだら模様である。民需部門は、23年半ばには頭打ちの傾向が生じるようになり、24年には不振が鮮明になった。そして、25年に入ると、軍需部門の勢いにも陰りが見え始めた。

 図3では、製造業の重要部門を選び、その生産動向を示している。やはり、早くも24年には落ち込んだり、25年に入って数字が悪化したりしている部門が目立つ。主要部門のパフォーマンスがこれだけ冴えないのに、「ロシアの製造業が好調」と言うのは無理があるだろう。

 図3の主要部門のうち、石油精製はウクライナによるドローン攻撃の打撃が大きそうだ。冶金は、鉄鋼・非鉄金属・貴金属がいずれも国際的な制裁で苦しんでいる。自動車は、先進国メーカーの撤退で22年に44.2%減と壊滅した後、23、24年と部分的回復は遂げてきたが、上述のとおり25年に入り販売が不振となり、生産も再び大幅減となった。


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