さて、問題は軍需生産である。ロシア統計局は、軍需生産そのものズバリの生産データは発表していないが、明らかに軍需の比率が大きく、それゆえに急成長してきた部門が5つほど知られているので、図4にそれを整理した。
あらゆる鉱工業部門の中で、過去3年間最も大きく伸びていたのが、「他のグループに含まれない金属加工製品」であり、ここには重・小火器、砲弾、ミサイルなどが含まれる。「撃って撃って撃ちまくる」というロシア軍の作戦は、この部門の大増産あればこそだったが、25年に入ってから伸び率がやや鈍化しているようだ。北朝鮮への依存度が高まるか。
注目すべきは、「他のグループに含まれない自動車以外の輸送機器」であり、戦車等の装甲戦闘車両、兵員輸送車、艦船などがここに含まれる。23、24年と30%台の伸びを示していたが、25年に入り完全に頭打ちの様相となっている。
一方、25年に入ってからかえって増産が加速しているのが航空・宇宙機器であり、ここには戦闘機、ヘリコプター、ドローン、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などが含まれる。ただ、ロシアは制裁による部品不足もあり、戦闘機のような高度な製品は思うように生産できていないという指摘がある。今年に入ってからの航空・宇宙機器の大幅な伸びは、使い捨てドローンなど単純な品目の大増産によるものではないだろうか。
2025年連邦予算の修正を余儀なくされる
25年のロシア連邦予算は、昨年11月に採択された。しかし、同予算には早くも春の時点で大幅な修正が加えられることになった。4月30日に財務省が予算の修正法案を提出したものである。修正の概要は、表に見るとおりである。
予算の修正は、その前提となる一連の重要な経済指標の見通しが変化したことを受けたものとされている。とりわけ、ロシアの輸出の主力であるウラル原油の価格見通しが、当初の1バレル当たり69.7ドルから、56.0ドルへと引き下げられたことが大きい。その結果、石油・ガス歳入が10.9兆ルーブルから8.3兆ルーブルへと下方修正された。
非石油・ガス歳入は若干拡大する想定だが、それでも歳入総額は40.3兆ルーブルから38.5兆ルーブルへと落ち込むこととなった。他方で、「特別軍事作戦」の支出増などで、歳出は41.5兆ルーブルから42.3兆ルーブルへと膨らむ。その結果、財政赤字は、当初の1.2兆ルーブル(対GDP比0.5%)から、3.8兆ルーブル(対GDP比1.7%)へと、さらに拡大することになった。