2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月2日

 ロシアとの結びつきの短期的な利益にかかわらず、イランは西側の金融、投資、技術により、経済を良くすることを目標にしている。弱体なロシア経済に自らを結びつけることは目標ではない、と指摘しています。

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 この論説は、ロシアがイラン問題で米を困らせ得るという指摘が多くを占めていますが、結論は、イランは西側の金融、投資、技術で経済を再建しようとしており、経済力のないロシアに頼らないだろう、というものです。結論部分の判断は、的を射ています。

 ロシアは、P5+1とイランとの交渉を邪魔立てする能力に欠けています。確かに、S-300防空システムの対イラン供与は、いざという時のイラン核施設爆撃を困難にします。しかし、その場合、最も困るのはイスラエルであり、これはロシアとイスラエルの争いになるだけです。なお、日本の立場から言えば、イラン攻撃は望ましくありません。

 イランにとって痛手となっている制裁は、石油輸出の削減と金融制裁です。しかし、ロシアは石油輸出国ですからイランの石油を輸入する必要はなく、制裁を破りようがありません。金融制裁は基軸通貨国である米国に出来ることであって、ロシアは無力です。

 イラン問題以外でも、ロシアに出来ることはあまりありません。シリアでは、ロシアの協力を得る必要はありません。化学兵器がまだ残存しているなど、搬出・廃棄のスケジュールに問題はあるようですが、根本スキームは変わっておらず、大した問題ではありません。ロシアが邪魔立てすれば、ロシア提案に乗った解決策は止め、もとに戻ってシリア介入を検討すればよいのでしょう。アフガン駐留軍への兵站は、ロシアが邪魔し得るものですが、パキスタン経由ルートもあり、克服可能な問題です。

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