シンガポールや米国では実用化
5分程度で培養肉がどんなものか分かる展示だが、筆者が会場を訪れた日は親子連れらが時折足を止める程度。同じパビリオン内の「ミライ人間洗濯機」が大勢の人だかりで賑わっていたのに比べれば、一般の人の培養肉への関心はそれほど高いわけではないようだ。
とはいえ、実用化という点では、人間洗濯機より培養肉の方が早いというか、海外ではすでに食卓にのぼっている国もある。培養肉の販売が認められているのは、シンガポール、アメリカ、イスラエル、オーストラリア・ニュージーランドなどだ。
このうち、2020年に世界で初めて培養肉を販売承認したシンガポールでは、日本のウズラの培養細胞から作られたパテやフォアグラが高級レストランで提供される他、一部の精肉店で培養肉を数パーセント含んだ冷凍チキンが販売されるなど、実用化が進む。
許される商品名は?
日本での培養肉の販売は、「表示」「安全」「製造」という3つの柱が揃って初めて可能になる。実用化の遅れは、表示は消費者庁、安全は厚生労働省、生産・流通は農林水産省、技術開発は経済産業省など所管が複数の省庁にまたがり、最終責任を負うのがどの省庁かはっきりしないためだ。動きが遅いとはいえ、実用化に向けての準備は進められている。
このうち「表示」については、消費者庁がこの夏、ガイドラインの中間とりまとめを公表する見込みだ。焦点の名称・定義は、従来の畜産物や魚介、農産物と明確に区別するために、「細胞培養」や「培養」といった表記を義務付ける可能性が高い。
例えば、「細胞培養チキン」「培養エビ」といった表示が想定される。一方で、「クリーンミート(清潔な肉)」のような、安全性や環境配慮を過度に印象付ける可能性のある呼称は、原則として認められないとみられる。
ちなみにシンガポールでは、「カルチベイテド(栽培)」や「カルチャード(培養)」などの用語を使用し、食肉ではなく「食肉代替品」として区別することが求められている。米国では統一表示ルールはまだないが、作成中の表示ガイドライン案では「カルチベイテド」や「セル―カルチャード(細胞培養)」「ラボ―グロウン(実験室培養)」を可とし、「クリーンミート」は不可となりそうだ。