2024年11月22日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年11月4日

 家畜の細胞を培養して作り出される「培養肉」。その開発に各国がしのぎを削るなか、日本の開発現場はどんな強みを持ち、どんな課題にぶつかっているのか。「培養フォアグラ」を世界で初めて生産したスタートアップのインテグリカルチャー(東京都)を取材した。

(nevodka/gettyimages)

再生医療を応用した低コストの培養システム

 人口爆発や穀物価格の上昇、地球温暖化などの影響で、これまでどおりの畜産では将来、人々が必要とするタンパク質を十分に供給できなくなるのではないか。こんな懸念と、アニマルウェルフェア(家畜福祉)や環境への配慮を理由に、植物肉や培養肉といった代替肉の開発競争が過熱している。

 先行して普及しているのはダイズを使うソイミートやコムギを使うグルテンミートといった植物肉だ。培養肉はそれに後れをとりながらも、本物の肉に近いだけに近年急速に期待を集めている。

 培養肉は2013年に英国で初めて試食会が催された。このとき供されたハンバーガーのパティの製造コストは、研究開発費を含めると1個当たり3000万円を超えていた。培養肉が高くつく最大の理由は、細胞を培養するために必要な成長因子を含む「ウシ胎児血清」といった動物由来の血清が高価なことである。

 そんな課題を克服し得るスタートアップが、インテグリカルチャーだ。同社は再生医療を応用した独自の培養システム「カルネット システム」を持つ。このシステムでは、複数の臓器どうしが血管でつながっている動物の体内環境を再現しており、血清の成分を外部から加えずともシステム内で作ることができる。

 「国内外のスタートアップは、添加する成長因子のコストをいかに安くするかという点で競争をしています。当社の技術であれば、そもそも成長因子を外から加える必要がありません。競合とは異なる新たな培養法によって、安く作れるという強みがあります」

 同社代表取締役CEOの羽生雄毅さんはこう解説する。カルネット システムと独自に開発した基礎培地を使えば、動物血清を使う場合に比べて、培養コストが約60分の1になるという。


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