2022年12月8日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年10月10日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 ウクライナ戦争による食料サプライチェーンの崩壊で、日本国内でも飼料価格の高騰が叫ばれている。この対策として、畜産用「子実用トウモロコシ」の生産振興が図られようとしているが、事を急いではいけない。

海外と同様に飼料用のトウモロコシを生産することが必ずしも日本に求められていることではない(fotokostic/gettyimages)

 トウモロコシを増産するとなれば、同じく生産拡大を図ろうとしている大豆と農地(水田・畑)が競合することになる。同じ穀物等でも、麦が基本的に冬作物なのに対し、トウモロコシと大豆はともに夏作物で「作付農地競合作物」である。日本の限られた農地をどう有効活用するのか、という観点から検討する必要がある。

世界から見る日本としての解

 穀物の大産地である米国中西部のコーンベルトは、すなわち「ソイビーン(大豆)ベルト」と呼ばれている。先物取引業界のこれまでの取引感覚では、<大豆価格とトウモロコシ価格のバランスが1.5倍の辺りから作付のシフトが出始める>と聞いた。

 米国農務省の予測などでは、トウモロコシの単収は大豆の3倍以上、価格は大豆がトウモロコシの約2倍で推移している。トウモロコシは大豆より単収が高いので価格は低くてもよいというわけである。

 長らく、この2つの作物の価格関係は<およそ2倍>で形成され、両者は、一見、バランスを保っているように見える。現在の不確定要素としては、ここに肥料価格の高騰が加わっている。より肥料を必要とするトウモロコシと土中の窒素を自ら固定する大豆の肥料面での有利性も生産者にとっては重要な判断材料になってきている。

 米国では、シカゴ商品取引所が指標を示し、需給に応じた価格を提示することで生産の柔軟調整が図られている。これに対し、日本にはそのような仕組みが未整備ないし機能していない状況である。現在のような急な飼料不足による一時的な価格高騰が起き、生産面で混乱が起きないだろうか心配である。

 生産物の用途を考えると、国産大豆の振興で目指すのは「食品用」で、子実トウモロコシは「家畜の飼料用」。この二つを比較し、直ちに作付転換するのは無理があるのではないか。

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